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笑顔の価値 「ねえママ見て、この制服かわいいでしょ?こんな制服を着たかったのよ。 特にこのリボンがかわいいと思わない、早くこの服を着て高校に行きたいな」真新しい制服に身を包んだ彼女はくるっと一回転した。スカートの裾がふわっと上がる、白いシャツに紺と深緑のチェック柄のスカートがよく似合い胸元の青く細いリボンがいいワンポイントになっている。「じゃーん!どう、似合う?」「とっても似合うわよ、今日のあなたはとっても素敵だわ」母の誉め言葉に彼女は恥ずかしそうにはにかんだ。私は彼女の笑顔を見るたびに心が和んで楽しくなりどんな悩みもなくなっていく。「それにねぇ~見てみて、建物がヨーロッパのお城みたい。 時計台もあって鐘が鳴り響くの、当然だけど冷暖房は完備で一年中快適よ」彼女は高校のパンフレットを私に見せた、楽しそうな笑顔が私の目に入ってくる。私は彼女が中学生の時に駄々をこねたことを思い出した。「コンクリートの固まりのような校舎には行きたくない。 夏は教室が汗臭く冬はストーブの周りにみんなで集まるような教室はやだ」 K壱さんの小説に戻る
お城みたいで冷暖房完備の快適な高校ならそんな駄々をこねることはないだろう。彼女の好みにピッタリ合うはずだ、今まさに彼女の笑顔がそれを物語っている。お城みたいで冷暖房完備の快適な高校ならそんな駄々をこねることはないだろう。彼女の好みにピッタリ合うはずだ、今まさに彼女の笑顔がそれを物語っている。 「そうね、子供の頃からあなたはヨーロッパのお城が大好きだったからねぇ」「うん大好き、早く学校に行きたいなぁ」彼女は高校生活を頭に浮かべてウキウキしている。私はそんなかわいい我が子をぎゅっと抱きしめたくなった。「喜ぶのもいいけどその分いっぱい勉強しなさい、大変だったんだから」「うん、こんな素敵な高校なら勉強するよ、だけどそれにはねぇ・・・」彼女はいたずらっぽい目で私を見た。「なぁに?早く言ってみなさい」「若くて、かっこいい先生が欲しいなぁ」「それなら早く言ってくれればいいのに、あなたに先生を選ばせてあげる!」「やった~、ママありがとう♪」彼女は私に飛びついてきた、彼女は最高の笑顔を私に向けた。そう、この笑顔を見ることが私にとって一番幸せなことなのだ。我が子の笑顔のためには彼女の高校を作るぐらい私にとっては安いものだ。 終 K壱さんの小説に戻る