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蔭の棲みか. 川野秀美 坂口喜美 潮谷くらら 平野由恵 松元麻美 吉田真理. あらすじ. 大阪市東部の在日同胞が多く住む町を舞台にソバン爺の視点から周囲の人々の群像を通して変容する「在日」社会を描いている。 主人公ソバンは故郷の済州島から渡日し、旧日本軍人に敗戦の年の春、呉港近くの漁港で米軍機の機銃掃射を受け右手首を失う。そのためいつも右手を庇いサックをはめている。 ソバンの息子・光一は学生運動に近づき撲殺され、妻も裁断機に腕を付け根から切り落とされ、出血死する。. 光一の同級生・高本は苦労して公立大の医学部を卒業し、地元で診療所を開業する在日同胞医師。
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蔭の棲みか 川野秀美 坂口喜美 潮谷くらら 平野由恵 松元麻美 吉田真理
あらすじ • 大阪市東部の在日同胞が多く住む町を舞台にソバン爺の視点から周囲の人々の群像を通して変容する「在日」社会を描いている。 • 主人公ソバンは故郷の済州島から渡日し、旧日本軍人に敗戦の年の春、呉港近くの漁港で米軍機の機銃掃射を受け右手首を失う。そのためいつも右手を庇いサックをはめている。 • ソバンの息子・光一は学生運動に近づき撲殺され、妻も裁断機に腕を付け根から切り落とされ、出血死する。
光一の同級生・高本は苦労して公立大の医学部を卒業し、地元で診療所を開業する在日同胞医師。光一の同級生・高本は苦労して公立大の医学部を卒業し、地元で診療所を開業する在日同胞医師。 その他、集落を牛耳るボスの永山、集落で生まれた最後の世代・金村、頼母子の金を持ち逃げしようとして袋叩きにあうスッチャ、朝鮮族の中国人寮長、出稼ぎ「韓国人」住居老人を訪問するボランティストでソバンの面倒をみる耳鼻科開業医の妻・佐伯さんなど多彩な登場人物にスポットをあてながらストーリーは展開される。
作家・玄月 1965年2月10日、大阪市生野区猪飼野東9丁目(現在の田島1丁目)に生まれる。本名玄峰豪。父・母、両親とも済州島から渡ってきた在日1世。兄2人・姉2人の5人兄姉の末っ子。 1971年、大阪市立舎利寺小学校入学。 1977年、大阪市立生野中学校入学。 1980年、大阪市立南高等学校入学。
1990年、横道弘美と結婚。子供を2人もうける。1990年、横道弘美と結婚。子供を2人もうける。 • 2000年、「蔭の棲みか」が第122回・芥川賞を受賞。 • その他主な著書に「悪い噂」(2000)、「寂夜」(2003)、「異物」(2005)などがある。
登場人物 ソバン(文書房) ・元日本人の朝鮮人で、朝鮮労働者が船に米の詰まった木箱を積み込む作業を監視していた時、敵機の機銃掃射を受け、右手首を失う。 ・光一の父親。 ・光一の死の2年後に妻もなくす。
高本 ・戦後生まれの在日。 ・内科の開業医であり「マッド・キル」の審判長もしている。 ・光一の同級生。 ・公立大学の医学部に入り、長い休みごとに鉄筋を担いで、学費を稼いでいた。
光一 ・ソバンの息子 ・高校3年の時、ソバンとは絶縁し、卒業後集 を出て上京 ・学生運動に積極的に参加し、「ベトナムから韓国を撤退させろ!」と主張 ・学生運動の過激集団に私刑され、撲殺される
永山 ・集落の中では「別格で、誰も逆らうことができ ない ・朝鮮語ができないことに負い目を感じている ・靴工場をはじめ、集落の生活を一変させる ・パチンコ店を経営 ・集落を買い取り、不法就労者を住まわせてい る
佐伯 ・一人暮らしの老人を訪問するボランティアをする開業医の妻。 ・毎週月曜日にソバンを訪ねてくるようになり3週間になる。 ・初めは快く思っていなかったソバンだったが佐伯を一目見て気に入り、佐伯が訪ねて来ることがソバンの楽しみの1つとなる。 ・佐伯は偽善的な優しさで集落に関わっていた。 ・集落に警察が来たとき、通報したと思われる。
寮長 ・永山の下で働いている大柄の男。 ・朝鮮族の中国人で、中国語、朝鮮語、日本語の3ヶ国語を話すことができる。 ・従業員にバラックを割り振って路地を見回るだけの仕事をしていたが、永山に認められて治安維持も含めてそれ以上の仕事を任されるようになる。 ・信義を重んじていて社長の永山にも止められないような行動をとる。
スッチャ • 歯がほとんどなくて、外見は乞食のようであった。「たばこをおくれ」と言い、物乞いをする。 • 20年前、頼母子講の金を盗んで逃げようとして、みんなにリンチされた。瀕死の状態で解放された。その後回復し、腰の痛みが悪化して足を引きずりながらダンボールを集めて細々生活してる。
時代背景 1.外国人の入国の状況 ・出入国に関する統計をとり始めた昭和25約18000人 ・昭和53年に100万人突破 ・平成16年の過去最高の人数を約100万人も上回る約670万人に達する。 ・今後も増える見通し ・入国、出国手続きにおける偽変造文書発見件数は、全体として増加傾向。
2.外国人の在留状況 ・戦後まもなく昭和30年代まで、外国人登録者数は50万人台後半から60万人代半ばで推移。 ・90%近くが在日韓国朝鮮人を中心とする特別永住者。 ・平成15年末現在の外国人登録者数は、過去最高の約192万人に達した。 ・特別永住者は24,9% ・新たに来日した外国人が増加している。
3.不法滞在者の状況 ・入国管理局の電算統計により、推計される不法残留者数は、平成5年現在約30万人をピークに減少。 ・平成17年現在約21万人 ・密航船等により、不法入国し、潜伏している外国人が、約3万人いると考えられる。 ・合わせると不法滞在者数は推計24万人
4.就労を目的とする外国人 ・就労を目的とする在留資格による新規入国者数は平成16年に15万8877人 ・このうち、いわゆる外国人社員に該当する在留資格による新規入国者数は、近年増減を繰り返している。 ・外国人登録者数については、ほぼ一貫して増加。
感想 • 「スッチャの呪いは佐伯さんまで巻き込んでしまったが、この吹き飛ばされた右手首がもっと早く金になっていれば、悲惨な私刑が繰り返されることも、怒りが極限に達した永山に佐伯さんが出くわすこともなかったのではないか。」 ・・・永山の下で働く労働者達の私刑がスッチャの呪いという考えは、突拍子もないものに思えるが、二百万という金額も同じであり、ソバンがそのように考えたのも無理ないことだと思う。また、ソバンが自分の右手で得る補償金によって、その呪いを清算させるべきだと考えているところで、集落に対してソバンが責任を負おうとしているのがわかった。
「自分にも転機はあったはず。しかし75年間、それに一度も、あとからあれがそうだったと気づくことさえないのだ。」「自分にも転機はあったはず。しかし75年間、それに一度も、あとからあれがそうだったと気づくことさえないのだ。」 ・・・妻や子供が亡くなった後もただひっそりと時間の流れに乗って同じ毎日を生きてきたソバンは、変わらない毎日を過ごすことを楽に感じ、自分を守ってきたのではないかと思った。それは、幼い時「井戸の水は百年は涸れない」と1つの確かな未来をソバンの父親に示されていたのに、井戸の水が20年も前に涸れてしまったことと何か関係があるように思った。自分が暮らしてきた集落が壊される時に初めて、自分の状態を変えようと行動するほど、ソバンは集落に執着心があったのではないかと思った。
「わしはいったいだれや」 ・・・高本との会話のやりとりの中で何気なく言った冗談のようにも思えるが、生まれは日本で生粋の日本人だといってもソバンの中に流れているのは朝鮮人の血であって日本人にはなれない。又、ソバンが生まれた時は朝鮮人も韓国人もなかった。日本人でも朝鮮人でもない自分は一体何なのか。「わしはいったいだれや」という短い一言の中にソバンの気持ちやこの時の背景、高本に自分は何に見えるかという問い掛けのようなものなど全ての意味が含まれているように感じられた。