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遠隔教育における役割を 導入した討論を支援する CSCLの開発と評価. 論文講読者 鈴木研究室3年 浦島裕美. はじめに. イソターネットを中心とした情報通信技術の普及は遠隔教育の新たな展開を意味 メディアが対面状況に比較して双方向を限定するため、教育の質が厳しく問われてきた そのため 質の高いコミュニケーションを支える実践の方法・環境の改善が求められる. CSCL. Computer Supported Collaborative Learning コンピュータに支援された協同学習
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遠隔教育における役割を導入した討論を支援するCSCLの開発と評価遠隔教育における役割を導入した討論を支援するCSCLの開発と評価 論文講読者 鈴木研究室3年 浦島裕美
はじめに • イソターネットを中心とした情報通信技術の普及は遠隔教育の新たな展開を意味 • メディアが対面状況に比較して双方向を限定するため、教育の質が厳しく問われてきた そのため • 質の高いコミュニケーションを支える実践の方法・環境の改善が求められる
CSCL • Computer Supported Collaborative Learning • コンピュータに支援された協同学習 • 非同期(メールetc)と同期(チャットetc)の2種類 • 今後の遠隔教育の実践方法・環境の開発においては、CSCL研究で得られた知見が参考になるだろう
本論文の概観 • 遠隔教育に利用するためのCSCLシステムの開発と評価 • 建設的な議論と対等な参加をいかに支援するかという問題の提起、検討 • 筆者らのシステムの説明、評価実験、検討
問題(1) • 遠隔教育においては、学生の自主的な参加と双方向のやりとりの保障が強調 • 参加の動機付け、コミュニケーションの確保という意味以外にも、教育実践における討論は、情報の交換と新しい情報の生成が行える しかし • 実際の討論は必ずしも質の高いものにならない • これを導くための課題として次の2点に着目
問題(2)どのように建設的な議論を行わせるか問題(2)どのように建設的な議論を行わせるか • 話題について焦点が絞られ、学習者同士で深く吟味しているような議論 • 話題をそらさずに個々の意見を明確にしていくような話し合い • 建設的でないと、議論が錯綜したり、提出された話題かよく吟味されずに次の話題に映ってしまう
問題(3)どのように議論に対等に参加させるか問題(3)どのように議論に対等に参加させるか • 偏りなく各自が意見を述べ、同時に相手の意見を聞くような状態 • 参加者それぞれの立場からの発言が等しく尊重され、吟味されるような討論 • 対等でないと、議論が不得意なメンバーは議論の途中で重要な発言を行っても無視されたり、納得がいくまで吟味する活動が奪われたりする
問題(4)同期型 • 対面に近い状況下で,気負わず発言できる • 話し合いの中で自身の考えを明確できる • メンバー同士の交流の感覚が強まる しかし • 議論が表層を滑りがちになる • 「意見のラベル」は参加者の負担が問題 • 強い発言権をもつ者により雰囲気が左右
意見のラベル • 議論の文脈における学習者の意見の位置付けを示すもの • 先行研究として、稲葉らの議論支援システムが挙げられる
先行研究(1)稲葉らの議論支援システム • 学習者が自身の発言内容に「提起」「説明」「同期」などの発言意図を示すラベルを付与 • 発言意図の流れから、議論がどのような状態にあるのかを同定し、学習者に介入 しかし • 学習者の発言ごとの負担が大きい
先行研究(2)稲葉らの議論支援システム • 現在話し合われている話題に対して意見を述べていない学習者が存在すると道程された場合、わからない部分があれば発言するように促しがされる しかし • 誤認識の問題がある
開発・rTable • 前記の問題を解決するために「セッション」と「役割の交替」という概念を導入 • rTableはサーバが起動している状態で、クライアント間で議論を行う事ができる • 議論は4名以上で行う事ができる • セッションは「役割の付与」「話題の決定」「最初のコメント」「自由議論」「セッション終了」の5つのプロセスで構成
要約ボード上のカードとリンクと付箋紙要約ボード上のカードとリンクと付箋紙
開発5つのプロセス(1) • 役割の付与 ・司会者・要約者・質問者・提案者の4つ ・5人目以降は役割なし ・参加者はセッション内で,役割に従って議論を行う • 話題の決定 ・セッションで話し合う話題の決定 ・提案者の役割はこれのみ
開発5つのプロセス(2) • 最初のコメント ・話題に対する最初のコメント ・設定された話題に対しての議論の契機を作る ・質問者の役割はこれのみ • 自由議論 ・通常の議論の時間 ・司会者は議論の進行役を務める ・要約者は要約ボードに論点のまとめを行う
開発5つのプロセス(3) • セッション終了 ・司会者は議論の結論が出たり、話題を変えた方が良いと感じた場合、セッションの終了を宣言 ・司会者は自動的に次のセッションでは提案者になることが決まっている
概要(1) • rTableが簡便性を高めるために目指していること(3点) • ナビゲーション ・討論の手続きを適切に参加者に示すためにナビゲーションウインドウを用意 ・各プロセスの移行、各役割のタスクの説明などの情報が提供
概要(2) • 負荷の軽減 ・役割交替の手続きが自動化 ・要約ボードの操作を簡易 • 情報の表示 ・手続きを実行する上で、必要な情報である、各参加者の現在の役割の表示や現在の話題のハイライトなど
予期される効果(1)建設的な議論 • 役割によって全体的な発言の方向性を与えられることは、個々の発言内容までは強く協調しないと期待 • 司会者以外の参加者においては発言内容に関する制限はほとんどないので、負担が少なくなると思われる
予期される効果(2)対等な参加 • 各役割のタスクは議論の展開に関してそれぞれの重要な意味を持っている • このタスクが学習者の間に分散される事でそれぞれの学習者が議論の展開に対等な立場で関われることが期待
評価の目的 • rTable上での「セッション」と「役割の交替」による討論の有効性を評価するため • 同一のグループがrTableを使って議論した場合と、チャットソフトを使って議論した場合との比較によって行う
検討すること • rTableが参加者にどの程度の負担を与えたか • rTableが建設的な議論を与えたか • rTableが対等な賛歌を支援できるかどうか • 分析の対象となるデータは、rTable、チャットソフトの各条件下での議論における発言の数、内容である
Web教材の概要 • 評価実験において、rTableと組み合わせて利用するWWW上の遠隔討論用の教材を開発 • 討論の議題,テキスト,イラスト,図表,動画,関連する情報を記載したサイトのリンク等からなる • テキストは、討論の課題へのいくつかの代表的な回答か、複数の仮想のキャラクターが意見を述べるという形で表現され、並置
評価実験 • 教材… 「小学校でコンピュータの知識や操作を教えるべきか」 「小学校では、どう情報モラルを教えるべきか」 • 被験者… 大学生8人。4人ずつ2つの群 • 課題を変えて2日間行う。この際、使用する討論環境を変える
評価実験・流れ • 被験者は30分間Web上の討論教材を各々の速度と関心に応じて閲覧 • 討論の議論に対する自分のひとまずの回答を教材に組み込まれた掲示板に書き込み、また、他の者が書き込んだ回答を1通り読む • 討論環境を使った議論を60分間行う • 議論を終えて、最終的な自分の回答を再度掲示板に書き込み終了
結果と考察参加者への負担 • 発言量に注目して検討 • Ⅱ群では、被験者感の発言数の差に有意傾向が見られた • 両群ともrTable条件とチャット条件間での被験者内の発言数の変化には有意な差は見られなかった • 総発言数は2群ともにrTableが少なく、ある程度の負担が伴うことが推測される
結果と考察建設的な議論(1) • 話題の混乱が起こった場面に焦点を当てることで検討 • 学習者の全ての発言を、「調整発言」「rTable発言」「発言」「その他」の4つのカテゴリーに分類
4つのカテゴリー • 調整発言…これまでの話題を整理しようとする発言や、元の話題に戻ろうとする発言 • rTable発言…rTableの手続きに関わる発言。このような発言の生起場面を取り上げ、どの程度話が整理されているか、または混乱していたかを見る目安とする • 発言…上記に該当せず、議論中の話題に関係 • その他…上記に該当せず、議論中の話題に関係しない
結果と考察建設的な議論(2) • Ⅰ・Ⅱ群を通して、rTable条件の方では調整が行われた場面が減っている • rTableではセッション各所で明確に割り当てられた司会者によって話題が整理されるために、大きな混乱に陥らないという、役割による効果も考えられる
結果と考察対等な参加(1) • 対等な参加がなされていたかどうかを示す尺度として、各自の発言形態の割合に注目 • 先ほどの分類で「発言」とされた発言を、その形態に着目し、さらに「質問」、「同意」、「意見」の3つのカテゴリーに分けた
3つのカテゴリー • 質問…先行の発言を言い直したり、意味の明確化を求めたりするものである。また、他のメンバーに意見を求めるものである • 同意…先行の発言に賛成したり、言い返したりするものである • 意見…上述のどれにも当たらないもの。つまり、自身の見解を表明した発言などである
結果と考察対等な参加(2) • Ⅰ・Ⅱ群を通して、rTable条件で意見と質問の数が同程度であることがわかる • チャット条件では意見と質問の数が、個人内で大きく異なっている • Ⅰ群ではrTable上の議論はA,B,Cの意見の偏り、Dの質問での偏りがなくなっている
結果と考察対等な参加(3) • Ⅱ群では、rTable上の議論はメンバー全員の意見の偏りが軽減している • 全体の同意が減っていることも特徴的である • rTableにおいて、意見と質問が同程度に現れていた事は、自身の意見の述べる行為と、相手の意見を聞く行為がバランスよく行われていたということであるので、対等な参加が行われていたということを示唆している
終わりに(1) • rTable上での議論が次のような特徴をもつ可能性があることがわかった ・全体的な発言数の減少 ・話題の混乱を防ぐ事ができ、建設的な議論が支援 ・各自の発言の内容が、意見を述べるものと相手の意見を聞こうとするものでバランスがとれ、対等な参加が行える
終わりに(2)全体的な発言数の減少 • rTableは参加者にある程度負担をあたえていることが推測される • rTableではセッションと役割の交替という特殊な手続きを課すと言う点で基本的に通常の討論よりも参加者の負担が増える • rTableの簡便性を高める機能の評価と共に今度の課題である
終わりに(3)対等な参加 • Ⅱ群において同意が減ったことから、実験では、お互いの意見を述べる事と質問する事に時間が取られてしまったようにもみえる。 • rTable上の議論は時間的に効率が悪いものであるのかもしれない
終わりに(4) • 前記の評価の結果は、あくまで今回の実験群における現象である • Ⅰ群とⅡ群の間で見られた差異のように、メンバーの構成によってrTableが与える効果は異なるだろう • 今度は様々な群の中でこの効果の違いを捉えていく必要がある • 実験場面ではなく教育現場での利用の問題も検討したい
感想 • 筆者らは以前からこの課題について研究しており、今回の論文は、以前のシステムの改良版ということが調べているうちにわかった。 • 参加者に役割を与えることは、必ずしもいいとは思わない(要約者が大変そうだ)。 • このプロジェクトは問題点がまだまだあるのに、終了(凍結)しているのは残念だ。
参考文献 • 中原淳 http://www.nakahara-lab.net/ • 西森・中原・杉本・浦嶋・永岡 議論を通した協同的な問題解決を支援するCSCL環境の研究(2000) 日本教育工学会論文誌 • 西森・中原・杉本・浦嶋・永岡 高等教育における遠隔学習を支援するCSCL環境の開発(4) 日本教育工学会第17回講演論文集 • rTable http://www.nakahara-lab.net/ie2000pa nel.PDF