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バセドウ病の寛解マーカー. 臨床内分泌入門 7 すみれクリニック 岡本泰之. 日本内分泌学会 COI 開示 発表に関連し、開示すべき COI 関係にある企業等はありません。. 2013 年 1 月 19 日. バセドウ病の抗甲状腺薬治療. 寛解. 甲状腺機能. 正常. (治療開始後月数). Titration 法. ②. ③ 予後予 測. ① 投薬中止の目安. LT4. Block-replace 法. これまで報告されている主な 中止時の 寛解マーカー. TRH テスト T3 抑制試験 血清サイログロブリン( Tg )
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バセドウ病の寛解マーカー 臨床内分泌入門 7 すみれクリニック 岡本泰之 日本内分泌学会 COI開示 発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業等はありません。 2013年1月19日
バセドウ病の抗甲状腺薬治療 寛解 甲状腺機能 正常 (治療開始後月数) Titration 法 ② ③ 予後予測 ① 投薬中止の目安 LT4 Block-replace 法
これまで報告されている主な中止時の寛解マーカーこれまで報告されている主な中止時の寛解マーカー • TRHテスト • T3抑制試験 • 血清サイログロブリン(Tg) • 血清T3/T4比 • TSH受容体抗体(TRAb)
TRHテスト • DAHLBERG • Block-replace 法(74例) • TRHテスト正常反応: 寛解率 74% • TRHテスト無反応:再発率 71% (J ClinEndocrinolMetab 1985) • NOTSU • Titration 法(31例): 維持量 1錠/日を2カ月以上 • TRH投与後のFT3上昇(120-180分でピーク)で判定 • FT3上昇 正常反応:寛解率 100% • FT3上昇 低反応: 再発率 90% (J ClinEndocrinolMetab 1985)
T3抑制試験 • YAMADA • Titration 法(115例): 2年投与後に試験 • 65例(57%)がT3で抑制:寛解率 89%(かつ T4がT3投与前の60%未満に抑制:寛解率 100%) (J ClinEndocrinolMetab 1984) • YAMAGUCHI • Titration 法(83例): MMI 1錠を数ヶ月投与後に試験 • 38例(46%)がT3で抑制:寛解率 68% (EndocrinolJapon 1990)
血清サイログロブリン • KAWAMURA • Titration 法(29例):MMI 治療期間17-40カ月 • 寛解(15例):中止時Tg値68ng/mL未満 • MMI継続(14例):治療開始24カ月以上経過後のTg値 140ng/mL以上 (10例/14例) (J ClinEndocrinolMetab 1983) TgAb陽性例ではサイログロブリンは正確に測定できない。
血清T3/T4比 • TAKAMATSU • Titration 法(47例):期間を2年に固定して投薬中止 • 中止時 TT3/TT4 > 20 再発率 86% • 中止時 TT3/TT4 ≦ 20 寛解率 58% (J ClinEndocrinolMetab 1983) • TAJIRI • Titration 法(44例): MMI 1錠で2カ月正常が中止条件 • 治療経過中にFT3/FT4比 5.5以上:再発率 91% • 治療経過中にFT3/FT4比 5.5未満:寛解率 82% • 中止時のFT3/FT4比は差がない (EndocrinolJapon 1991)
TSH受容体抗体(TRAb) *1:TBIIとTSAbの両方の研究を含む *2:バセドウ病ガイドライン2011
中止時の寛解マーカーに関する報告(まとめ)中止時の寛解マーカーに関する報告(まとめ) • いずれのマーカーも使用する条件を考慮すれば有用である。 • マーカーが寛解の基準を満たした条件で投薬を中止した時の寛解率はおおよそ60~80% • TRHテスト、T3抑制試験は手技が煩雑で、実施できる施設に制約があり、簡便さから主にTRAbが利用されてきた。 その後 • KASHIWAI論文(Endocrine Journal 2003) • 隔日1錠の最少維持量で6カ月甲状腺機能正常が維持されている条件で投薬を中止した時の寛解率は81%で、過去の寛解マーカーの成績と同等の寛解率を得られる。 • この投与法が日本のガイドラインで中止の目安として記載。
バセドウ病の抗甲状腺薬治療 甲状腺機能 正常 (治療開始後月数) Titration 法 Titration 法 [ガイドライン] 隔日1錠で6ヶ月以上 最少維持量治療法 ? 最少維持量治療法において有用な寛解マーカーはあるのか? 治療期間固定法 Block-replace 法 LT4
最少維持量治療法(隔日1錠投与)において有意差の報告されている寛解マーカー最少維持量治療法(隔日1錠投与)において有意差の報告されている寛解マーカー *1:TSAbも有意差あり。FT3, FT4, TSH, 甲状腺サイズは有意差なし *2:TRAbは第2世代。TSHも有意差あり(1.0μU/mL以下で再発率高い傾向)
最少維持量期間別にみた寛解率とTRAbとの関係最少維持量期間別にみた寛解率とTRAbとの関係 (Konishi T , et al. Endocr J 58: 95-100, 2011)
最少維持量治療法における寛解群と再発群のTRAbの分布最少維持量治療法における寛解群と再発群のTRAbの分布 (Okamoto Y, et al. Endocr J, 2006)
最少維持量治療法における中止時寛解マーカーの報告(まとめ)最少維持量治療法における中止時寛解マーカーの報告(まとめ) • いずれの報告でも寛解群と再発群との間にはTRAbに有意差を認める。しかし、分離能は低く、特に陽性の場合は寛解・再発予測は困難である。 • 報告数は十分ではなく、さらに検討が必要。 • TRAb以外のマーカーはほとんど検討されていない。 • 隔日投与で正常が維持されることが良い寛解マーカーであるなら、さらに少量にすることは有用か?
最少維持量治療法における寛解マーカーについての再検討最少維持量治療法における寛解マーカーについての再検討 • 対象は2006年4月~2010年3月にすみれクリニックを受診した未治療または抗甲状腺薬治療開始早期(3カ月以内)の全バセドウ病患者511人(女403人、男108人) • 2012年10月までの治療経過を分析した。 • 年齢分布は男女とも30代をピークとする一峰性分布を示し、これまで報告されている年齢分布と一致した。 • ガイドラインに準じて抗甲状腺薬投与を行い、最少維持量は隔日1錠または更に減量して週に2~1錠とした。 • 最少維持量で6カ月以上機能正常が持続すれば抗甲状腺薬投与を中止した。
抗甲状腺薬治療開始後の転帰(511人) 中止時寛解マーカーの分析
寛解マーカーとして分析した項目 • 投薬終了時のFT3, FT4, FT3/FT4比, TSH • 投薬終了時のTRAb • 投薬終了時の血清サイログロブリン • 全投薬期間 • 最少維持量期間 (男女別に分析)
寛解群 vs再発群(女性) 中央値(最小 – 最大) • 寛解率 79% • TRAb 陰性: 86% • TRAb陽性: 71%
寛解群 vs再発群(男性) • 寛解率は70% • TRAbを含め、すべての項目で寛解群と再発群の間に有意差なし
隔日1錠 vs週に2~1錠 38 64% n.s. P< 0.05 隔日1錠で正常、週2~1錠に減量後に悪化したもの19例 これらを隔日1錠の再発群に含めると n.s.
最少維持量治療法における中止時の分析結果(まとめ)最少維持量治療法における中止時の分析結果(まとめ) • 最少維持量治療法においては、TRAbはこれまでの報告同様、再発群で有意に高値を示すが、分離能は低く有用性は限られる。(女性) • 隔日1錠では正常を維持できるが、週に2~1錠に減量すると悪化するケースがあり、最少維持量をより少量にすることは寛解率を高めるのに有用である。(女性)
治療開始時の寛解予測マーカー • 最少維持量治療法では中止の条件を満たすことができれば80%の高い寛解率が得られる。 • 治療開始時点において、最少維持量で中止できる条件に持っていけるかどうかを予測できれば、治療法の選択、治療計画を考える上で有用。
分析項目 • 性別 • 治療開始時年齢 • FT3, FT4, FT3/FT4比 • TRAb • 甲状腺体積 • 治療開始6カ月後のTRAb
性別 P<0.05 オッズ比 1.64(95%信頼区間:1.02-2.62)
治療開始時年齢中止基準達成群 vs中止基準未達成群(女性)
FT3、 FT4、 FT3/FT4比中止基準達成群 vs中止基準未達成群(女性)
TRAb中止基準達成群 vs中止基準未達成群(女性)
甲状腺体積中止基準達成群 vs中止基準未達成群(女性)
中止基準達成困難のカットオフ値とオッズ比、女性中止基準達成困難のカットオフ値とオッズ比、女性 1
中止基準達成率(女性) • 治療開始時年齢年齢 • 35歳未満:49% • 35歳以上:69% • 甲状腺体積 • 30 mL以上:44% • 30 mL未満:74% • 6か月後のTRAb • 6 IU/L以上:42% • 6 IU/L未満:81% 28% 34%
中止基準達成困難のカットオフ値とオッズ比、男性中止基準達成困難のカットオフ値とオッズ比、男性 他の因子は有意でない • 中止基準達成率 • 甲状腺体積 • 40 mL以上:33% • 40 mL未満:63% • 6か月後のTRAb • 3 IU/L以上:40% • 3 IU/L未満:81% 25%
今回の分析結果全体のまとめ • 治療開始時 • 男性は女性に比較して、投薬を中止できない率が高い。 • 女性における中止基準達成困難予測マーカー • 35歳未満 • 甲状腺体積 30 mL以上 • 治療開始6カ月後のTRAb 6 IU/L以上 • 男性における中止基準達成困難予測マーカー • 甲状腺体積 40 mL以上 • 治療開始6カ月後のTRAb 3 IU/L以上 • 中止時 • TRAbは再発群で有意に高値を示すが、分離能は低い。 • 最少維持量をより少ない週に2~1錠にすることは寛解率を高めるのに有用。
最後に 最少維持量治療法において、 投薬中止できるかどうかだけでなく、投薬中止できた患者の寛解・再発の予測が治療開始時にできるか?
治療開始時 甲状腺体積と投薬中止後の予後(女性; 他の因子は有意差なし) P<0.05
男性 女性 35歳未満 未治療バセドウ病 抗甲状腺薬治療 女性 30mL以上 男性 40mL以上 甲状腺体積の評価 女性 6 IU/L以上 男性 3IU/L以上 治療開始6カ月後のTRAb評価 中止基準達成困難予測群 抗甲状腺薬治療継続 隔日1錠で正常 中止基準達成せず 甲状腺サイズ 大 and/or TRAb陽性 週に2~1錠で正常 抗甲状腺薬以外の治療も検討 投薬中止