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国際的食糧需給について. 2008 年 3 月 3 日. 丸紅経済研究所 所長 柴田明夫 Shibata-A@marubeni.com TEL : 03-5446-2481. (注)表紙図は米 EIA レポート、新華通信ネットジャパン他より. 国際商品市況は長期上昇トレンドへ. ➢ 商品市況の10~15年サイクル 。 CRB 指数は年明け史上最高値を更新中。 1960 年代低位安定、 70 年代強い上昇、 80 ~ 90 年代長期低落、 2002 年~強い上昇. 2.世界経済が直面する「2つの危機」と背景 . (石油)資源の枯渇.
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国際的食糧需給について 2008年3月3日 丸紅経済研究所 所長 柴田明夫 Shibata-A@marubeni.com TEL:03-5446-2481 (注)表紙図は米EIAレポート、新華通信ネットジャパン他より
国際商品市況は長期上昇トレンドへ ➢商品市況の10~15年サイクル。CRB指数は年明け史上最高値を更新中。 1960年代低位安定、70年代強い上昇、80~90年代長期低落、2002年~強い上昇
2.世界経済が直面する「2つの危機」と背景 2.世界経済が直面する「2つの危機」と背景 (石油)資源の枯渇 地球温暖化 地球温暖化 資源枯渇と地球温暖化の緩和策が喫緊の課題:省エネ・省資源・環境、生産フロンティアへの挑戦、代替エネ(バイオ燃料)・材料の開発
3.原油100ドル時代の到来 ●価格体系の上方シフト(安い原油時代の終焉) ⇒2000年以降、石油の需給構造が180度転換。 ⇒「歪み」を突いた投機マネーの流入。90ドルでも世界の石油需要は拡大加速 (資料)NYMEX
5.名目価格での「均衡点の変化」は始まったばかり5.名目価格での「均衡点の変化」は始まったばかり ●1980~2005年までに先進国の物価(CPI)(=工業製品価格)は2.5倍に上昇。 しかし、原油、非鉄、穀物などの一次産品価格指数(商品市況)はほとんど上昇せず、実質価格は1/2以下に低迷してきた。 ●2000年代に入って、新興国の急速な工業化を背景に、ようやく一次産品価格が一般物価に追いつく動きが始まった。 ●今後は、商品市況が高止まり・一段の上昇に向かうなか、製品価格への価格転嫁が進展するとみられる(全般的なインフレ傾向へ)。
6. 2008年も世界経済は5%弱の高成長を持続へ 世界GDP成長率と主要地域の寄与度 • サブプライム問題を発端とする金融不安は、08年前半に金融機関の損失処理の進展を経て、同年後半にも解消。 • 米国経済は07年Q4から08年Q1まで低迷。Q2からは金融不安の鎮静化とともに回復へ。ただ、 08年の成長率は2.3%にとどまる。 • 住宅市場の調整は08年後半まで続く。消費は同年前半まで鈍化するが、堅調な雇用環境が支えとなり失速は回避。 • 欧州・日本の景気は減速するが、後退のリスクは小さい。 • 欧州は住宅市場の調整、日本は所得環境の悪化から、それぞれ個人消費が鈍化。ただ、両地域とも輸出と設備投資主導で緩やかながら景気拡大を持続。 • 中国を中心に新興国が内外需バランスとれた安定成長を実現、 • 内需が拡大する中国とインド。世界的に旺盛なエネルギー・資源需要続き、ロシア・ブラジルは堅調な経済発展を持続、中東やアフリカも安定成長を確保へ。 • 世界経済は新興国主導で5%弱の高成長を持続 • 米国が伸び悩んでも新興国は順調という「デカップリング」は、08年も続く。 米国・日本は、07年予測よりも下振れしたが、BRICsがそろって期待以上の高成長を実現、世界経済も予測を上回り、06年に続く5%超の成長実現へ。 7 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
7.穀物:世界的供給不足から相場が急騰 ●シカゴ小麦相場は、11ドルを突破し史上最高値。大豆も14ドル台を付け、1973年の12ドル台以来 の高値へ。➢世界の穀物需給は1970年代前半の食糧危機レベルにあり要注意。
8.世界の食糧需給をみる上での視点 • 「均衡点の変化」(量と価格) • 世界食糧在庫の減少(1970年との類似) • 中国のインパクト(臨界点を超えた) • 特定作物に依存する世界の食料 • 遺伝子組み換え作物をどうみるか • バイオエタノールの急増で3つの争奪戦 • 国家間、市場間(エネルギーと食料)、農業と工業(水と土を巡る争奪戦) 食糧も資源化
9.長期的に見た穀物、原油価格 (資料)世銀、IMF
10.1970年代初めに酷似する世界の穀物需給 10.1970年代初めに酷似する世界の穀物需給 ●世界の穀物の07/08年度期末庫率は14.7%と再び低下し、1970 年代初低水準。 (米農務省報告2008年1月11日)
需要の現状(1人当たり消費量*人口) 世界人口は70年の37億人→05年65億人へ1.8倍 世界の穀物需要量は、70年の11億トン→05年20億トンへ1.8倍に増加(1人当たり年間 308kg)。 小麦3.3→6.2億トン、トウモロコシ2.7→7.2億トン、大豆0.46→2.28億トン、米(精米)2.1→4.2億トン 所得向上に伴う食肉需要の増加:畜産物1kgの生産に必要な穀物量は、牛11kg、豚7kg、鶏肉4kg、鶏卵3kg バイオ燃料の急増:さとうきび、トウモロコシを原料とするバイオエタノールの生産は、01年3,132kl→07年6,256kl(推計)へと倍増。この73%を米国、ブラジルが占める。 需要の見通し 世界人口は、65億人→2050年90億人へ1.8倍(中国1.1倍、インド1.5倍、アフリカ2.1倍) バイオ燃料は、2030年には07年現在の6倍へ 供給の現状(生産=収穫面積*単収) 1人当たり収穫面積は、1962年の20.8a→03年10.7aに半減。 穀物単収は、1.4トン/ha→3.2トン/haへと2.3倍に拡大。但し、その伸び率は60年代の年3%→70年代2%→80年代後半以降1.5%へと低下。 近年、主産地での干ばつの影響もあり生産量は伸び悩んでいる。 供給の見通し 世界人口は70年の37億人→05年65億人へ1.8倍 OECD-FAO予測:2015年の穀物収穫面積は、02~04年比6%増の7.1億haへ。単収は、2.9トン/ha→3.3トン/haへ13%増加。ただ、年率では1.1%増に止まる。 遺伝子組み換え作物は、単収の向上よりも生産コスト削減が狙い。 世界の穀物収穫面積の約3割を占める灌漑農業においては、地下水枯渇などが問題。 新たなリスク要因としての地球温暖化、水不足問題 12.世界の食糧需給の現状と展望 世界の食糧需給は一段とひっ迫傾向が強まる
14.収穫面積は減少傾向。生産は単収の伸びに依る14.収穫面積は減少傾向。生産は単収の伸びに依る
15.背景にある中国:一段と加速する経済発展スピード15.背景にある中国:一段と加速する経済発展スピード
第1段階 主食の中で雑穀・イモ類の急速な減少(コメ・小麦の増加「白色革命」) 第2段階 主食(コメ・小麦)の減少と副食比率の増加(肉、卵、水産物、植物油) 第3段階 副食の内、動物性タンパク食品の増加とアルコール飲料の増加 第4段階 食の簡便化の浸透(レトルト食品、外食、中食の増加と伝統食品の高級化、グルメ化) 第1期(毛沢東時代 1949~70年代末) 社会主義原始蓄積期 「ぜいたくは敵」政策 主食では何とか満腹できる段階 第2期(鄧小平時代 1980~90年代初め) 市場経済導入期 「ぜいたくは素敵」 配給品の廃止、都市化の進展 第3期(江・胡時代 1990年代~現在) 市場経済の浸透 主食消費量の減少 レトルト食品、外食、飲料消費拡大 食の流通広域化 「緑色食品(安全安心)」 16.都市化に伴う食料消費パターンの変化 中国のケース 食生活変化の4パターン (参考)小島麗逸著「中国の伝統的食文化の変化」日本貿易会月報2003年2月号を参考に作成
8個/500gで試算すると 4,607億個 13億人で割ると 354個(1人1日1個) ◇中国の畜産物生産量 卵
17.中国におけるトウモロコシ、大豆の生産&貿易17.中国におけるトウモロコシ、大豆の生産&貿易 (資料)米農務省需給報告
18.米穀物需給は、大豆の在庫・在庫率が半減18.米穀物需給は、大豆の在庫・在庫率が半減 07/08年度のトウモロコシ生産は、作付け面積の拡大を受けて、過去最高水準へ。しかし、在庫は低水準。大豆在庫は半減 (資料)米農務省報告2008.1.11
20.米国のエタノールブーム • ブッシュ大統領一般教書演説:エネルギー政策(07.1.23) • ①エタノールなど代替燃料の利用拡大:エタノール生産を05年35→ 2012年75→2017年350億ガロン(20%in10Y)に大幅拡大。ガソリンの消費量を15%削減。 • ②自動車の燃費規制強化(現行、1ガロン27.5マイル(1リッター11.1km))→5%ガソリン消費量削減(CO2排出を10年間横ばいへ) • ③戦略石油備蓄の強化:現行6億9,100万バレル(輸入量の55日分)→20年間で15億バレルへ 2017年までにエタノール生産を06年の50億ガロン(1ガロン=3.79L)から350億ガロンに10倍増させる。 ●エタノール100ガロン生産→トウモロコシ35ブッシェル (資料)米農務省2007.6.11
21.米国のエタノールはどこまで増えるのか21.米国のエタノールはどこまで増えるのか 能力 全米のエタノール工場数07年9月現在 →129工場68.8億ガロン →建設/増設中86工場67.7億ガロン (資料)Renwable FuelsAssociation
22.脆弱な国際穀物マーケット • 食糧という性格から、国内市場が優先される。このため、生産量に対して貿易に供されるのは約1/8。 • 主な輸出国が米国、カナダ、オーストラリア、南米に限られる。 • 輸入国が日本、韓国などアジアに偏重。最近は新たな輸入国として中国が登場。 (資料)米農務省需給報告
23.穀物貿易量は2億トン強→2.5億トン弱へ23.穀物貿易量は2億トン強→2.5億トン弱へ
24.特定の作物に依存する世界の食糧供給 ※歴史上食用に供されたことのある植物約3,000種の内、商業ベースで栽培されている植物は約150種。これらの内、小麦、コメ、トウモロコシ、ポテト、大豆などの数種で、全生産量の過半を占める。 作物の多様性 の維持という 面では極めて 脆弱な 供給構造 にある 野菜、 果物、 嗜好飲料 などの 換金作物の 生産が 拡大
25.遺伝子組換え作物(GMO)はどこまで期待できるか25.遺伝子組換え作物(GMO)はどこまで期待できるか
26.進む地球温暖化 • 07年2月気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第4次評価報告書を発表。温暖化の進展が明らかに。 • 人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定。 • 20世紀後半の北半球の平均気温は、過去1300年間の内で最も高温で、最近12年(1995~2006年)のうち、1996年を除く11年の世界の地上気温は、1850年以降で最も温暖な12年の中に入る。 ⇒ 京都議定書で温室効果ガス削減の取り組みが進む。 ・ 2008~12年に、1990年比で日本6%、欧州8%など、先進国全体で少なくとも5%の削減を目指す。 世界の年平均気温上昇 棒グラフ: 各年の平均気温の平年値との差 太線(青):平年差の5年移動平均 直線(赤):長期的な変化傾向 平年値は1971~2000年の30年平均。 (出所)気象庁
27.有限性を強める水資源 ●人口増加を背景に今後、効率的な水利用、適切な水管理が重要になる(特にアジア地域)。 ●食料自給率が低い日本は、食料輸入を通じて間接的に大量の水を利用しており、水不足が農業に与えるダメージの影響を受け易い。 (出所)農水省:国際食料問題研究会
28.食糧生産に必要な水(バーチャルウォーター)28.食糧生産に必要な水(バーチャルウォーター) ●農畜産物や加工食品生産には大量の水を使用 ●日本は食料自給率が低く、大量の食料を輸入 ⇒大量のバーチャル・ウォーターを輸入(年間約640億m3超) ●実際の使用量839億m3(前ページ)の約3/4に相当
30.スケールアップして1970年代と類似 するコモディティを巡る環境30.スケールアップして1970年代と類似 するコモディティを巡る環境
31.日本の食料・農業市場をめぐる動向:鳥瞰図31.日本の食料・農業市場をめぐる動向:鳥瞰図 食のグローバリ ゼーション フェアトレード 農政改革 農業 食品産業 食糧法改正 WTO FTA、EPA 中国爆食 食料・農業・農村基本法 ・耕作者主義 ・株式会社参入 ・構造改革特区 世界穀物需給ひっ迫 ①農業経営強化 BSE 鳥インフルエンザ 「食」と「農」の再生プラン 食の安全・安心(国際標準化政策) ・HACCP(ハサップ) ・トレーサビリティ ・リスク・アナリシス(評価と管理の分離) ・食品表示 ②農業構造・農地 制度改革 農協改革(未曾有の危機) 地球環境問題 高齢化 ③農業の多面的機能発揮 食のニーズ変化 アジアの水不足 CO2 バイオマス日本 グリーンツーリズム 食を巡る 技術革新 ICタグ GMO、バイオ SCM 中食・外食の普及
32.食の安全性を巡る状況の変化 ■リスク要因の多様化(3つの安全性) ー ①目に見える安全性(ex.鮮度)、②食後の安全性(ex.O-157、BSE(狂牛病)、中国餃子)、③目に見えない安全性(ex.GMO) ■食サービスへの依存度の高まり、流通の広域化・複雑化 ー 中食・外食の普及、原料調達のグローバル化(離れる農業・ くっ付く農業)、供給プロセスの分業化など • ■社会全体の情報化の進展 • ー マスメディアの活動、インターネットの普及など • ■科学進歩と不確実性の増大 • ー 環境ホルモン等の新たなリスク、GM食品の安全性、BSEの人への感染性など
33.農業は先進国産業である 土壌学、化学(肥料・農薬)、気象学、機械工学、電子技術、土木工学、情報工学、動植物学、経済学、農学、経営学、遺伝子工学 社会・経済の萃点としての農業 ご清聴ありがとうございました。