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環境政策における効率性基準の使用と制約 ─有害化学物質と温暖化の現実から─

環境政策における効率性基準の使用と制約 ─有害化学物質と温暖化の現実から─. 岡敏弘 ( 福井県立大学 ) 2003 年 11 月 22 日. 倫理に基礎をおく厚生経済学 ─ E.J.Mishan─. 2 つの福祉基準 効率性基準 ( パレート基準、純便益基準 ) 補償テスト、カルドア - ヒックス・テスト 衡平基準、分配基準 倫理的合意の役割 経済学者の役割 個人的政治経済学と厚生経済学との違い 重み付け費用便益分析への反対. 補償テスト (K-H テスト ) の論理的性能(1) ボードウェイ・パラドックスの克服.

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環境政策における効率性基準の使用と制約 ─有害化学物質と温暖化の現実から─

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  1. 環境政策における効率性基準の使用と制約─有害化学物質と温暖化の現実から─環境政策における効率性基準の使用と制約─有害化学物質と温暖化の現実から─ 岡敏弘(福井県立大学) 2003年11月22日

  2. 倫理に基礎をおく厚生経済学─E.J.Mishan─ • 2つの福祉基準 • 効率性基準(パレート基準、純便益基準) • 補償テスト、カルドア-ヒックス・テスト • 衡平基準、分配基準 • 倫理的合意の役割 • 経済学者の役割 • 個人的政治経済学と厚生経済学との違い • 重み付け費用便益分析への反対

  3. 補償テスト(K-Hテスト)の論理的性能(1)ボードウェイ・パラドックスの克服補償テスト(K-Hテスト)の論理的性能(1)ボードウェイ・パラドックスの克服 • 補償変分の合計が正であることは、K-Hテストが満たされるための十分条件である。 • 次の場合、それは必要条件でもある。 • 所得効果が無視できる場合 • 費用が専ら供給される財に利害関心を持たない人によって一般的購買力の剥奪という形で負担される場合 • 費用が外部効果の形で現れる場合

  4. 補償テスト(K-Hテスト)の論理的性能(2)シトフスキー・パラドックスについて補償テスト(K-Hテスト)の論理的性能(2)シトフスキー・パラドックスについて • シトフスキー・パラドックスが起こるために必要な条件 • 損する人と得する人が存在していること • 損する人も供給される財に選好をもっていること • 損をする人の、供給される財に対する評価が、損によって変わるほど、損失が大きくかつ所得効果が大きいこと • 逆パラドックスは、もっと起こりやすい • しかしこれは論理的性能の欠陥ではない

  5. センとミシャン • 潜在能力アプローチ • 個人の福祉は、機能を数値化したものをある重みを用いて集計したものによって測られる。 • 集計のための重みは社会的な合意を得た客観的なものでなければならない。 • それを誰がどうやって決めるかについてセンは解決を与えていない。 • 国連人間開発指標(HDI)は潜在能力ではない。 • 国の寿命指数+教育指数+GDP指数 • 寿命指数─平均寿命から20を差し引いたものを60で割った値 • 教育指数─成人識字率と初等・高等教育普及率とを2対1の重みで足しあわせたもの • GDP指数─GDP(米ドル)の対数から2を差し引いたものを2.60で割った値 • ミシャンの経済学の特徴 • 社会の合意は集計のための重みを与えるほどの精度を持たないと考える。

  6. 環境改善便益の計測 • 環境改善便益=環境悪化費用=環境の価値 • 2つの意義 • ピグー税を実施するには環境の価値が必要だ。 • 環境規制を効率性基準(費用便益分析, CBA: cost-benefit analysis)で評価するために環境の価値が必要だ。

  7. 環境規制評価でのCBAの実用化 • 米国大気浄化法(CAA: clean air act)の評価 • 費用は5230億ドル(1970~1990) • 便益は平均で22兆2000億ドル • うち75%は死亡減少の便益 • 死亡減少の便益 • 死亡数の減少×確率的生命の価値(VSL: value of a statistical life) VSL=(WTP for reducing death rate by 10-5)÷10-5

  8. VSL • CAA評価で用いられたVSL=480万ドル • Fisheretal.(1989)160万~850万ドル • OMBの勧告(2003)100万~1000万ドル • イギリスのVSL(交通)90万ポンド • 日本の推定値 2000万~2億円(竹内ら) • これらから、VSL=数億円

  9. 環境化学物質規制のリスク削減費用単価(Cost Per Life-Year Saved)

  10. 2つの道 • 費用便益分析に固執する • 非自発的リスクを考慮して便益を修正 • 現実の政策を非効率的として排斥 • 費用便益分析を捨てる

  11. 費用便益分析の脆弱性 • リスクと便益の分配 • 世代間衡平または持続可能性 • WTP実在性への疑念

  12. 地球温暖化問題に効率性基準を適用しようとする議論地球温暖化問題に効率性基準を適用しようとする議論 • Nordhaus 1994 • 温暖化の被害費用と対策費用とを比較して最適な年々の経済活動とCO2排出量の経路を求める→何もしないのが最適である。 • Fankhauzer 1995 • 先進国のVSL=150万ドル • 中所得国のVSL=30万ドル • 低所得国のVSL=10万ドル • CO2削減の限界費用 • 米国153ドル、EU198ドル、日本234ドル

  13. Fankhauserの議論に従うと 温暖化対策の費用と便益の分配構造(例示)

  14. 地球温暖化問題の本質 • 基本的事実 • 経済成長しながらCO2排出量を減らした経験はない。 • 大気中CO2濃度は増え続けている。 • 課題 • 先進国が生活水準を維持し、途上国が生活水準を向上させながら、CO2の排出量を減らすことができるか • 前頁の表が示していること • これから生活水準を向上させていこうとする国でCO2削減の費用が低い。 • なぜか • 費用とは、選好と所得とによって決まるWTAだから

  15. 二酸化炭素排出量と国内総生産との関係

  16. 温暖化問題の課題 • 先進国がCO2の排出量を減らしながらその生活水準を維持できることを途上国に見せること • 先進国では費用が高いから途上国で減らせというのは、温暖化問題が解決不可能だと白状しているのに等しい。 • 低所得状態の固定化以外に解決の道がないと言っているのだ。

  17. 京都議定書を批判する人たち • 経団連の環境税批判(2003年11月18日) • 京都議定書は、日本やEU等、排出量削減の遵守義務を負う参加国のみにペナルティを課す一方、温暖化ガスの削減義務を負わない国にはペナルティを課さず、また発効しても世界の温暖化ガスの全排出量の約3割をカバーするに止まるという致命的な欠陥がある。今後、途上国の温暖化ガス排出量が先進国の排出量を上回ると予測される中、ポスト京都議定書においては、米国や途上国を含め、全ての国が参加できる新たな枠組を構築するとともに、京都議定書の反省をふまえて、地球規模で実効性のある政策を提案すべきである。

  18. 日本人の母乳中ダイオキシン類濃度の推移(厚生省)日本人の母乳中ダイオキシン類濃度の推移(厚生省)

  19. 食品からのダイオキシン類曝露の将来予測(Kishimoto, Oka, Yoshida and Nakanishi 2001)

  20. 日本における農薬の健康リスクの推移(蒲生1995)日本における農薬の健康リスクの推移(蒲生1995)

  21. 大気中温室効果気体濃度の推移

  22. 公共事業でも費用効果分析で十分だ─林道事業評価の例(福井市)─公共事業でも費用効果分析で十分だ─林道事業評価の例(福井市)─

  23. 結論 • 環境政策は衡平が第1。 • 持続可能性 • WTP実在への疑念 • 世代内分配問題は地球規模で現れる(温暖化) • 可能な場合には効率性基準の限定的使用。 • 問題を見ての経験的判断。

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