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太陽型星の化学組成比較. 八坂 能郎. この時間の内容. 1. 研究の目的 2. 岡山での観測 3. 解析方法 4. キットピークと岡山の比較 5. 太陽型星の化学組成比較 6. 化学組成解析の系統誤差. 1 . 研究の目的. 分光器の差異に起因する解析誤差を調べる。 キットピーク天文台150太陽望遠鏡+フーリエ分光器による Solar Flux Atlas 及び、岡山天体物理観測所188 cm 望遠鏡+エシェル分光器による月のスペクトルを解析し、結果を比較する 化学組成解析法の系統誤差を調べる。 太陽及び F-K 型に属する5星の間で化学組成を比較する。.
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太陽型星の化学組成比較 八坂 能郎
この時間の内容 1.研究の目的 2.岡山での観測 3.解析方法 4.キットピークと岡山の比較 5.太陽型星の化学組成比較 6.化学組成解析の系統誤差
1.研究の目的 • 分光器の差異に起因する解析誤差を調べる。 キットピーク天文台150太陽望遠鏡+フーリエ分光器によるSolar Flux Atlas 及び、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡+エシェル分光器による月のスペクトルを解析し、結果を比較する • 化学組成解析法の系統誤差を調べる。 • 太陽及びF-K型に属する5星の間で化学組成を比較する。
2.観測 国立天文台岡山天体物理観測所188cm+HIDES(HIgh Dispersion Echelle Spectrograph) 波長分解能 65000 スペクトル波長域 4300-8700A S/N 200-300 観測対象 F-K型星(表)
恒星のスペクトル エシェルスペクトル ↓ IRAFによる 一次処理 ↓ エシェル分光器のスペクトル像 提供:Ohkubo
3.化学組成解析法 • 恒星の化学組成をいかにして求めるか
等価幅と元素量 光の強度 吸収線の強さを表す数値 • 等価幅 等価幅 測定 • 元素量 波長 等価幅 49.1mA 金属量 弱い吸収線では、金属量は等価幅に比例
吸収線の選定 吸収線どうしの重なり 等価幅の誤差 → 金属吸収線どうしのブレンド AlI ↓ 地球大気吸収線とブレンド ↑ FeI コンティニウムが見えない TiI ↑ ZrII 恒星の理論スペクトルや、地球大気吸収スペクトルを参照
化学組成解析の方法 吸収線解析 恒星大気に含まれる原子、イオン → 吸収線 吸収線の強度は、恒星大気中の元素量を反映している 解析プログラム SPTOOL モデル大気の構築、吸収線の強度測定、組成解析 基礎方程式 : 静力学平衡の式、輻射輸送方程式、状態方程式 仮定 : 放射平衡、平行平板大気、局所熱力学平衡 吸収線情報 : 波長、元素、電離状態、遷移確率、拡幅
大気パラメータ • 大気パラメータは、その大気モデルで吸収線強度を矛盾なく、説明するものでなければならない。 • 太陽型星の解析では、もっとも多く見られる鉄の吸収線を利用する。 1.有効温度 (FeIの励起平衡) 2.表面重力加速度 (FeIとFeIIの電離平衡) 3.微小乱流速度 (等価幅の強弱補正) 4.金属量(太陽を基準に対数スケールで表記する) • 初期値を与える → 反復計算
有効温度の決定 • 有効温度は、吸収線の励起ポテンシャルと、鉄の量の間に、傾向がみられなくなるように選ぶ。 例:太陽の有効温度を決める FeIの吸収線、35本をプロット 8.0 8.0 8.0 5550K 5700K 5700K 5850K 鉄の量 鉄の量 鉄の量 7.0 7.0 7.0 0 5 0 5 0 5 励起ポテンシャル(eV) 励起ポテンシャル(eV) 励起ポテンシャル(eV)
重力加速度の決定 • 重力加速度は、FeIの吸収線と、FeIIの吸収線で、鉄の量が一致するように選ぶ。 7.6 鉄の量 7.5 FeI 7.4 FeII 4.00 4.50 重力加速度
4.キットピークFTSと 岡山HIDESの比較 • 波長分解能の影響
分光器によるスペクトルの見え方比較 キットピークFTS 波長分解能400,000 岡山HIDES 波長分解能65,000 同じ波長域のスペクトル比較
O=岡山 K=キットピーク 組成解析結果の比較 100 100 傾き1.00 傾き1.03 鉄 鉄以外 等価幅(O) mA 等価幅(O) mA +FeI ×FeII 0 0 100 等価幅(K)[mA] 100 0 等価幅(K)[mA] 0 等価幅の系統誤差は、3% 大気パラメータは誤差範囲で一致 ↓ 金属量の誤差は対数で 0.01
キットピークFTSvsHIDES • 鉄の等価幅に系統的な差異は見られなかった。このため、大気パラメータは誤差範囲内で一致した。 • 一方、鉄以外の元素では、等価幅に系統的な差異が見られた。 • 金属量への影響は、絶対量がわずかであるため、太陽型星の化学組成解析においては、実用に耐える • 化学組成解析は、同じ分光器によって得られたデータのみに基づいて行えば、このような系統誤差を避けることができる。
5.星の分光解析 • 太陽型星の化学組成較
恒星の大気パラメータ • 鉄の吸収線の解析に基づく大気パラメータ 決定精度 ±50 ±0.1 ±0.2 ±0.02 • 恒星進化論のあてはめ 進化等時線 進化軌跡 大気パラメータ → 質量、年齢 Lejeune&Schaere(2001) Lejeune&Schaere(2001) M = 0.8-1.5Solar 1.5 重力加速度 9.6 重力加速度 ↓HD145675 10.2 ↑ HD79028 0.8 ↓HD185144 ←HD10780 log(year)=9.6-10.2 ↑ HD186427 有効温度 有効温度 黒:金属量1倍ピンク:金属量2倍
金属量パターン1 解析した吸収線 = 計230本×5星 解析した元素 C, N, Na, Al, Si, Ca, Sc, Ti, V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Sr, Y, Zr, Ba, Ce, Pr, Nd = 金属量 金属量 HD79028(F9)vs太陽 log(year)=9.8 HD186427(G3)vs太陽 log(year)=10.0 0.4 0.4 0 0 -0.4 -0.4 10 原子番号 60 10 原子番号 60 分光型で太陽に最も近い 化学組成の面でも類似
金属量パターン2 HD10780(K0)vs太陽 log(year)=10±1 HD185144(K0)vs太陽 log(year)=10.2 金属量 0.4 0.4 金属量 0 0 10 原子番号 60 10 原子番号 60 HD10780は、唯一右上がり傾向が見られる HD185144は、金属が太陽より少ない 0.8 金属量 HD145675は、金属過剰星。CaからZnにかけての金属量の奇偶性が太陽より弱い 0.4 HD145675(K0)vs太陽 0 10 60 原子番号
CaからZnの金属量パターン 原子番号 原子番号 原子番号 0.4 1.0 0.4 HD145675(K0) HD10780(K0) HD79028(F9) 金属量 金属量 金属量 Ca Zn -0.2 -0.2 0.6 0.2 0.2 HD185144(K0) 金属量 金属量 HD186427(G3) -0.4 -0.4 原子番号 原子番号
HD145675のHD10780に対する差分アバンダンス 1 • NからSiの減少傾向と、CaからZnにかけて増加傾向が顕著 • HR7373vs太陽(大久保)と類似。 金属量 0 10 原子番号 60
凝縮温度 Al 凝縮温度[K] Ca • 惑星の形成温度と組成の関係を示す。 Mn Na Zn 原子番号 凝縮温度=元素が固体に取り込まれる温度
凝縮温度と金属量の関係 HD10780vs太陽 HD145675vs太陽 金属量 金属量 凝縮温度 凝縮温度 フラット 1000K以上でやや右下がり
HD145675のHD10780に対する差分アバンダンス • 凝縮温度に対して右下がりの傾向が強まる。 金属量 凝縮温度
鉄の量と他の金属量の相関 • Bodaghee(2003)は、百余星の化学組成解析を行い、鉄の金属量と、それ以外の10元素について相関を調べた 0.4 Mnの量 Mnの量 0 -0.6 0 0.4 -0.4 0 0.6 Feの量 Feの量 Mnにみられる鉄の量に対する依存性 Bodaghee(2003)より引用 ターゲット星で、Bodaghee(2003) の傾向から大きく外れるものはなかった →
6.化学組成解析の系統誤差 • 金属量の不可解な依存性
大気パラメータと化学組成の相関 Bodaghee(2003) 百余星の化学組成解析に基づき、有効温度と元素量の相関を指摘 金属量 有効温度 Bodagheeの解析しなかった元素では? 重力加速度と化学組成の相関は? Vにみられる有効温度依存性 Bodaghee(2003)より引用 C Na Al Si Ca Sc Ti V Cr Mn Co Ni Cu Zn Y Zr Ce Pr Nd 有効温度(B) * * * + - - - - * * * * * * * 有効温度 - - - - - - - - 重力加速度 - + - + + + + + + + +:正の相関 - :負の相関 (有意水準70パーセント)
まとめ • 過去に研究例のない元素を加えて、太陽型星の化学組成解析を行った。 • 分光器の分解能は、化学組成の解析結果に影響を及ぼすため、同じ分光器で得られたスペクトルに基づいて、差分解析を行った。 • 恒星の化学組成パターンには、多様性と類似性の両方がみられる。 • 現行の化学組成解析は、結果に表面温度あるいは、重力加速度に対する依存性があり、改良が望まれる。詳細は、より多くの恒星を解析することで明らかになるであろう。
参考文献 恒星大気の化学組成解析全般 David F. Gray “The observation and analysis of stellar atmospheres” (輪読本) 恒星の進化軌跡 T.Lejeune, D.Schaerer 2001A&A ...366...538 太陽型星の化学組成解析 A.Bodaghee, N.C.Santos, G.Israelian, M.Mayor 2003A&A ...404...715