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通信デバイス工学

通信デバイス工学. 2014 年 6/24, 7,1, 7/8, 7/15, 7/22, 7/29 講義分. 山田 博仁. 1. 講義スケジュール 6/24 半導体光デバイスの基礎 7/1 半古典論による物質と電磁場との相互作用 7/8 電磁場の量子化と全量子論 7/15 半導体中での光学遷移、フォトダイオード、半導体レーザー 7/22 光増幅器、光変調器、光スイッチ、波長フィルターと光合分波器 7/29 まとめ. 講義について. 2. 参考書   米津 宏雄 著、光通信素子工学 - 発光・受光素子 - 、工学図書

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  1. 通信デバイス工学 2014年 6/24, 7,1, 7/8, 7/15, 7/22, 7/29講義分 山田 博仁

  2. 1. 講義スケジュール 6/24 半導体光デバイスの基礎7/1 半古典論による物質と電磁場との相互作用7/8 電磁場の量子化と全量子論7/15 半導体中での光学遷移、フォトダイオード、半導体レーザー 7/22 光増幅器、光変調器、光スイッチ、波長フィルターと光合分波器7/29 まとめ 講義について 2. 参考書   米津 宏雄 著、光通信素子工学 - 発光・受光素子 -、工学図書   霜田 光一 編著、量子エレクトロニクス、裳華房   山田 実著、電子・情報工学講座15 光通信工学、培風館   伊藤弘昌 編著、フォトニクス基礎、朝倉書店 第5章 3. 質問等 E-mail: yamada@ecei.tohoku.ac.jp、電気系2号館203号室 4. 講義資料のダウンロード URL: http://www5a.biglobe.ne.jp/~babe

  3. ネットワークを飛び交うデータ量の爆発的増加ネットワークを飛び交うデータ量の爆発的増加 国内のある基幹ネットワークノード(1台)が処理しているデータ量の推移 最近では約3年で倍増傾向 2倍/約3年 データ量 (Gbit/s) 2倍/年 月/日/年 http://www.jpix.ad.jp/en/technical/traffic.html

  4. 国内のネットワーク トラフィックの推移 国内のインターネット ダウンロード トラフィックの総量は、2011年末で1.7Tbps 現在もなお、年率40%で増加 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 year 出典: H25年度版情報通信白書

  5. 海底光ケーブル網 出展  http://www1.alcatel-lucent.com/submarine/refs/index.htm

  6. ネットワーク機器の電力消費の予測 国内のインターネット トラフィックは年率40%で増加 ネットワーク機器の消費電力もそれに伴い増加すると仮定すると、2020年頃には、2007年の年間総発電量を超える見通し http://www.aist-victories.org/jp/about/outline.html

  7. 適用分野が広がりつつある光通信 光通信は今や、サーバーの筺体間データ通信から、パソコンにも SONYVAIO Zに搭載されたユニバーサルバス インターフェース(Light Peak) サーバーのBackplane (オレンジ色のケーブルは光ファイバー)

  8. 講義でカバーするデバイス 光通信に用いられる各種光素子(光デバイス) 1. 受動光素子(passive optical device, passive photonic device) • - 光導波路、光ファイバー(optical waveguide, optical fiber) • 光分岐器(optical splitter) • - 光方向性結合器(optical directional coupler) • - 光波長フィルター(optical wavelength filter) • 光波長合分波器(wavelength multiplexer/demultiplexer) • 偏光子(light polarizer) • 光波長板(wave plate) • - 分散制御素子(dispersion control device) • - 光減衰器(optical attenuator) • 光アイソレーター(optical isolator) • - 光サーキュレーター(optical circulator) • - 光スイッチ(optical switch, photonic switch) • - 受光素子、光検出器、フォトダイオード(PD: photo detector, photo diode) 光通信に用いられる各種光デバイス 2. 能動光素子(active optical device, active photonic device) • - 発光ダイオード(LED: light-emitting diode) • 半導体レーザー(semiconductor laser, LD: laser diode) • 光増幅器(optical amplifier) 3. その他の素子(波長変換素子、コヒーレント受信器など)

  9. 光通信以外の用途にも用いられる各種光素子(光デバイス)光通信以外の用途にも用いられる各種光素子(光デバイス) • CCDイメージセンサー(charge-coupled device image sensor) • -CMOSイメージセンサー(CMOS image sensor) • - 太陽電池(solar cell, photovoltaic cell) • 光電子増倍管(photo-multiplier) • - 撮像管(image pick-up tube) • CRT、ブラウン管(CRT: cathode-ray tube, Braun tube) • - 液晶ディスプレー(liquid crystal display) • - プラズマディスプレー(plasma display) • 有機EL(organic light emitting display) • 各種光記録媒体(CD, DVD, BLD, ホログラム、フィルム、バーコード) • 医療用、加工用などの各種レーザー(気体、固体、液体レーザー) • - 非線形光学素子(non-linear optical device) 21世紀の文化と生活を支える各種光デバイス これらのデバイスを総称して、「フォトニック デバイス」と呼んでいる フォトニクス分野は、日本が未だに強い技術競争力、産業競争力を維持している数少ない分野 21世紀の「産業の米」となるかも?

  10. フォトニック デバイスとは 電子の電荷を操作 エレクトロニクス (電子工学) 電圧と電流 電子の波動関数を操作 電子管, ダイオード, Tr, FET, LSI トンネル効果素子 磁気記録 フォトエレクトロニクス (オプトエレクトロニクス) 電子のスピンと電荷を操作 ディスプレイ スピントロニクス CCD, CMOSセンサー フォトンと電子の電荷を操作 GMR HDD MRAM 太陽電池 ? LD, LED フォトンを操作 受光素子, 光検出器 エネルギーと数 未開拓 マグネティクス (磁気工学) 電磁波 フォトニクス 光スピニクス 振幅と位相 レーザー 光磁気ディスク HDD 光ディスク 磁気テープ 光ファイバー 物質のスピンを操作

  11. 105 T = 300K Si In0.53Ga0.47As 104 GaAs 光吸収係数: α(cm-1) InP Ge 103 102 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 波長: λ(μm) 光デバイスに用いる半導体に求められる性質 受動素子(非発光素子) ・ 動作波長帯で透明であること 半導体光デバイスの基礎 ・ 非線形光学効果が小さいこと (非線形光学素子は別である) ・ 材料分散もなるべく小さい方がよい ・ 複屈折もなるべく無い方がよい (偏波無依存) 能動素子(発光素子) ・ 動作波長帯で適度に光を吸収する、  つまり光との相互作用が可能なこと ・ 発光素子の場合は、発光遷移確率が  高いこと(直接遷移型半導体) ・ pn接合が得られる(電流注入素子が  実現可能な)こと 主な半導体材料の光吸収係数

  12. 半導体とバンド構造 結晶中の電子の波動関数(電子状態)は、ブロッホの定理によると、波数と呼ばれる量子数によって規定される。このことが、エネルギーと波数との関係(分散関係)が原理的に示せることを保障している。バンド理論においては、このエネルギーと波数との関係を、エネルギーバンド(バンド構造)と呼ぶ。 半導体のバンド構造 電子 バルクSiでは、ホール(正孔)はΓ点付近に分布しているのに対して、電子はX点付近に分布するので、間接遷移型半導体 バンドギャップは約1.1eV ホール Si内の電子エネルギーの分散関係

  13. 化合物半導体のバンド構造 GaAsもInPも、電子、ホール共にΓ点付近に分布 電子 半導体のバンド構造 電子 ホール ホール InPの電子エネルギーの分散関係 GaAsの電子エネルギーの分散関係

  14. Geのバンド構造 Ⅳ族半導体であるGeも間接遷移型であるが、歪を加えると、直接遷移likeになる 半導体のバンド構造 近年、Geによる半導体レーザー(低温、パルス発振) が実現された Geの電子エネルギー分散関係

  15. 材料分散 分散とは ‥‥ 物質を電磁気学的に特徴付けている誘電率(屈折率)、透磁率などが、それと相互作用する電磁波の周波数(波長)に依存すること 構造関係式は、 半導体光デバイスの基礎 共鳴周波数付近では、誘電率(屈折率)も大きく変化する。一般的に、線形応答における周波数応答関数の実部と虚部の間には、クラマース・クローニッヒ(Kramers-Kronig)の関係が成り立つ。 セルマイヤー(W. Sellmeier)の式 媒質中の光の分散について,波長と屈折率との間の関係を現象論的に導いた式 ここで λi = c/νiであり、c は真空中の光速、νi は媒質の共鳴振動数で、Ai は定数である Siの誘電関数(電子系)εの第一原理計算

  16. 複屈折 複屈折とは‥‥異方性媒質においては誘電率(屈折率)や透磁率がテンソルとなる 半導体光デバイスの基礎 (構造関係式) 出射光線 光学軸 (c軸) 異常光 結晶などは光学異方性媒質 入射光線 光線が結晶に入射すると、図のように2つの光線(常光と異常光)に分離する場合がある。このうち、電場の振動面に光学軸があると、Snellの法則に従わない異常光となる。 常光 複屈折結晶において、光を入射しても光が分かれない(即ち複屈折が生じない)方向を光学軸(optic axis) という。(通常の結晶のc軸に相当) 方解石の複屈折

  17. 非線形光学効果 非線形光学効果とは ‥‥ 物質の誘電率(屈折率)、透磁率などが、電場や磁場の強さに依存する現象 構造関係式は、 半導体光デバイスの基礎 全ての物質は、多かれ少なかれ非線形性を有している。特に電場(光)が強い場合に非線形性が現れる。波長変換デバイスなどでは、非線形光学効果を用いる。 入射光が弱い場合、光の電場 E に 比例した分極 P (線形分極: linear polarization)が誘起される。 線形分極 c:電気感受率 入射光が非常に強くなると、電気感受率が電場に依存するようになる。

  18. 半導体光デバイスの基礎 直接遷移型および間接遷移型半導体における電子遷移 間接遷移型半導体では、光の放出または吸収にフォノン(格子振動)が介在

  19. 励起状態 原子核 物質における光の吸収と放出(発光) 全ての光の源は原子と思ってよい 太陽からの光‥‥太陽の中での水素原子の核融合 物質の発光現象 蛍の発光‥‥有機物の化学反応による 光 基底状態 物が燃える時の発光‥‥有機物の化学反応による 励起準位 ν LEDなどの発光‥‥半導体結晶の中での電子遷移 ΔE 光 基底準位 ΔE = hν しかし何故、物質から光が放出されるのだろうか? 物質の発光現象を扱うには、物質と光(電磁波)との相互作用メカニズムについて学ばなければならない。 量子電子工学(Quantum electronics)という学問分野

  20. v ω -e 電子 m 陽子 r +e ラザフォードの水素原子の模型 ラザフォードが提唱した原子は、古典電磁気学に依ると不安定であり、電磁波(光)を放出しながら10-11 秒程度の短い時間で潰れてしまうことが予測される。(私の電磁気学Ⅱの最終回の講義資料を参照) 物質の発光現象 この矛盾を解消するために、量子力学が誕生 ボーアが提唱した原子の模型は、電子は原子核の周りを物質波という形で定在波を形作って回転している。そしてその波が丁度「量子条件」によって規定される離散的な状態しか許されないため、安定に存在するというもの。また電子が、ある定常状態から別の定常状態へ移行(遷移)するときに、放射(吸収)される光の振動数は、振動数条件(ΔE = hν)を満たすというもの。 -e 陽子 +e では何故、電子が状態間を遷移する時に光が放出(吸収)されるのだろうか? ボーアの水素原子の模型

  21. 物質と電磁場との相互作用を扱うには、以下の3方法が考えられる。物質と電磁場との相互作用を扱うには、以下の3方法が考えられる。 1. 物質、電磁波共に古典論で扱う方法(古典論) つまり、半導体のバンド構造などは考えず、電磁場は波動として扱う方法。このモデルでは光の吸収は現象論的に扱えるが、発光現象は説明できない。 光の吸収および発光現象を扱う理論 2. 物質は量子論で扱い、電磁波は古典論で扱う方法(半古典論) つまり、半導体中の電子は量子化され、エネルギーバンド構造を為す。一方電磁場は波動として古典論で扱う方法。このモデルでは光の吸収、誘導放出(レーザーなどの原理)は扱えるが、自然放出は説明できない。 3. 物質、電磁波共に量子論で扱う方法(全量子論) 自然放出までを説明できるよう、つまり物質と電磁場との相互作用を厳密に扱うには、電磁場をも量子化した全量子論モデルで扱う必要がある。 解析モデル 物質 電磁場 光の吸収 誘導放出 自然放出 説明可 説明不可 古典論 古典論 古典論 説明不可 説明不可 古典論 説明可 半古典論 量子論 説明可 量子論 量子論 説明可 全量子論 説明可 説明可

  22. 電磁場と物質との相互作用を理解するためにはまず、電磁場の記述の仕方や基本的性質を理解しておく必要がある。電磁場と物質との相互作用を理解するためにはまず、電磁場の記述の仕方や基本的性質を理解しておく必要がある。 Maxwell方程式は、 電磁場の記述 と書き表わせる。 また、電場 E と磁場 B は、電磁ポテンシャル A(x, t), ϕ(x, t) によって以下のように表わせる。 従って、上に示した一連のMaxwell方程式は、場の量としての電場 E と磁場 B を用いる代わりに、A とϕによる式に置き換えることができる。

  23. さらに電磁ポテンシャルには任意関数 χ だけの不定性があるので、任意のスカラー関数 χ(x, t) を用いて、 電磁場の記述 と置き換えた電磁ポテンシャル AL とϕLを用いても場の方程式の性質は変わらない。このような関数 χ(x, t) をゲージ関数と呼び、上のような新たな電磁ポテンシャル AL とϕLを選ぶことをゲージ変換と呼ぶ。 電磁ポテンシャル AL とϕLを、 の関係を満たすように χ(x, t) を選んだ場合を、ローレンス・ゲージと呼ぶ。この場合には場の方程式は、以下に示すAL とϕLそれぞれに対する簡単な波動方程式に帰着する。 或いは、ダランベール演算子 (d‘Alembertian)□を用いて ローレンス・ゲージは、ローレンツ変換に対して不変であるため、相対論で用いられる。

  24. ローレンス・ゲージ以外にも、ベクトルポテンシャルを発散のないように選び、ローレンス・ゲージ以外にも、ベクトルポテンシャルを発散のないように選び、 の条件式を満たすゲージをクーロン・ゲージ(Coulomb gauge)と呼ぶ。 この場合、場の方程式は以下のようになる。 電磁場の記述 電荷 ρe も電流 ieも存在しない自由空間では場の方程式は であり、 従って、電場 E と磁場 B は、ベクトルポテンシャル A から、 この場合、電磁場はベクトルポテンシャル A のみによって記述できる。つまり、スカラーポテンシャルについては扱う必要はない。 の関係により、導出できる。

  25. 電磁場内に1個の荷電粒子(電子)が存在するときの粒子系のハミルトニアンは、電磁場内に1個の荷電粒子(電子)が存在するときの粒子系のハミルトニアンは、 で与えられる。(導出は各自試みられよ) 荷電粒子と電磁場との相互作用 ここで pは、電子の運動量演算子、m は電子の質量、V は電子のポテンシャル、e は電子の素電荷、そしてAはベクトルポテンシャルである。このうち、電磁場が無い中に電子のみが存在する成分 H0を、主ハミルトニアンまたは無摂動ハミルトニアンと言い、電子と電磁場の双方の寄与からなる成分 Hint を相互作用ハミルトニアン(Interaction Hamiltonian)と言う。即ち、 となる。 Hintの最後の項は、A2 に比例することから高次の過程(非線形光学過程)であり、その確率は最初の項よりも通常は小さいので、ここでは無視することにする。

  26. 荷電粒子は、電磁場の正弦波的変動のための周期的な位置変動をするものと仮定荷電粒子は、電磁場の正弦波的変動のための周期的な位置変動をするものと仮定 電子雲の偏り そして、粒子の運動をニュートン力学的に求めると、 E r 相互作用の電気双極子近似 と書かれる。さらにベクトルポテンシャルを 原子の分極 +e e+iωt E と置くと、電場は、 e−iωt r −e と書かれる。従って、 電気双極子 ei2ωtや e−i2ωt の項は、時間積分すると消える と書ける。ただし、R = erで、電気双極子能率(electric dipole moment)と呼ばれている。

  27. 相互作用ハミルトニアン 相互作用の電気双極子近似 には、電場による影響(クーロン力)と磁場による影響(ローレンツ力)の両方が含まれているはずであるが、上で導いた荷電粒子との相互作用の式では、電場による影響REしか含まれていない。これは、荷電粒子の運動の形態を、 のように、ある限られた場所での振動と仮定したためである。もし荷電粒子に平行運動のような運動形態を仮定したならば、磁場による影響も含まれてくるはずである。 このように相互作用を、電場のみに影響すると仮定して REのように近似することを、電気双極子近似という。近似による変位の部分を電場で展開すると、電気四重極子や電気八重極子のような多重極の分極が現れることもある。 工学で扱う物理現象は非常に複雑なものが多い。従って、全ての物理現象を取り入れた完璧な理論を構築することは不可能である。 良きエンジニアとは、それら複雑な物理現象の中で、何が本質的に重要かを見極め、近似をうまく使い、無視できる物理現象は思い切って無視し、シンプルな理論を構築できる人である。ただし、どんな近似を使ったのかは決して忘れてはいけない。

  28. 半導体中では、電子とホールが分極(電気双極子)を作る半導体中では、電子とホールが分極(電気双極子)を作る 半導体中での電気双極子 伝導帯 電子 電子 −e E 電気双極子 電気双極子 + +e ホール ホール 値電子帯 半導体中における電気双極子

  29. 電流値など、多くの粒子(電子)が関与する物理量は、多くの粒子による統計的な平均値となる。また単一事象において、複数回観測(測定)を行った場合の期待値なども統計的な扱いが必要となる。そのような多数の粒子或いは多数回の測定についての統計的性質について扱う。まず、ν 番目の粒子または ν 回目の測定における状態を、 量子統計と密度行列 と書くこととする。 ここで  は、一つの粒子のみが存在する場合のエネルギー固有状態である。完備性が仮定されているので、  の1次結合によって任意の    をつくれるはずであり、  には添え字 (ν)はいらない。 ある物理量に対する演算子を Aとすると、 ν 番目の粒子における期待値は、 となる。 次に、粒子の集団全体における期待値の平均(ensemble average)を求める。 ν 番目の粒子が寄与する割合(粒子の抽出確率)を P(ν) とおき、規格化しておく。

  30. 期待値の統計平均は、 と書ける。 ここで、以下のような書き換えを行う。 量子統計と密度行列 ρmnを要素にもつ行列 ρ を密度行列(density matrix)と呼ぶ。 密度行列を用いると、 と書き改められる。 は恒等演算子(identity operator) は行列 ρAの対角要素を全て足し合わせたもの、即ちTrace であり、 と表わすことができる。また、       である。

  31. 密度行列 ρ の性質が分かれば、集団内の個々の粒子についての状態    や抽出確率 P(ν) を知らなくても、統計性を含めた期待値  を知ることができる。そこで、密度行列ρ を表現する方程式、つまりρ が従うべき方程式を求めてみる。 まず、密度行列の行列要素の定義式を、以下のように書き直す。 密度行列の運動方程式 従って密度行列は、               と書くことができる。 この式の両辺を時間 tで微分すると、 となる。 ただし、抽出確率P(ν) の時間依存性はないとしている。

  32. シュレーディンガー方程式              および、そのエルミート共役シュレーディンガー方程式              および、そのエルミート共役 より、 密度行列の運動方程式 となる。 これは、密度行列の時間発展を表す式であり、密度行列の運動方程式或いは、量子リウヴィル(Liouville)方程式もしくはリウヴィル-フォン・ノイマン方程式とも呼ばれる。

  33. 電子系の主ハミルトニアンを H0とし、電気双極子能率を Rとする。前に述べたように、電場が存在するときの相互作用ハミルトニアン Hintは、−REとなり、電子系全体のハミルトニアン Hは、 となる。 双極子との相互作用がある場合の密度行列 これを、密度行列の運動方程式に代入すると、 となる。 ここで、最後の ≈ では、1個の電子が存在する領域が電磁波の波長に比べて十分に小さく、その範囲内で電場の分布は一定と見なせることを仮定している。実際、気体原子に束縛されている電子の存在範囲はせいぜい数Å程度であり、また半導体中の電子に至ってもせいぜい数十Å程度である。それに対して、相互作用する光の波長は数千Åもあるので、この仮定は妥当である。

  34. 次に、密度行列の行列要素に対する方程式を導出する。エネルギー固有状態には時間依存性が無いので、次に、密度行列の行列要素に対する方程式を導出する。エネルギー固有状態には時間依存性が無いので、 と表すことができ、従って、 双極子との相互作用がある場合の密度行列 と書くことができる。なお。ここで用いている固有状態は、主ハミルトニアン H0の固有状態である。

  35. 従って、状態   は、エネルギー固有値 Wnをとり、状態間には直交性があるので、 双極子との相互作用がある場合の密度行列 となる。 ただし ωmnは、順位 m と順位 n とのエネルギー差に対応する角周波数であり、 で与えられる。

  36. 話を簡単にするためにまず、電子の取り得るエネルギー準位が2つしかない2準位系において、電磁場との相互作用を考える。話を簡単にするためにまず、電子の取り得るエネルギー準位が2つしかない2準位系において、電磁場との相互作用を考える。 Wb 上側(励起)準位を   、下側(基底)準位を   とすると、 2準位系での相互作用 Wa となる。ここで、              であり、双極子能率 Rの行列要素の対角要素 Rbbも、一般的な媒質では 0 となる。従って、 となる。同様に、 が得られる。

  37. ここで      は各々、上側および下側準位の電子分布であり、 である。一方      は2つの状態間での量子相関(量子コヒーレンス)を表している。これらの式は、それらの時間的変化を記述しており、第1式は上側準位の電子分布の時間的変化を、第2式は下側準位の電子分布の時間的変化を、そして第3式と4式は、それら準位間での量子コヒーレンスの時間的変化を記述している。 2準位系での相互作用 これらの式は、光の吸収(absorption)や誘導放出(stimulated emission)を記述しているが、実際にはこれら方程式に含まれていない以下の現象が存在する。 上側準位の電子は誘導放出により下側準位に遷移し、やがて熱平衡状態での電子分布になったら正味の発光は起きなくなる。そこで、連続して発光させるためには、下側準位の電子を上側準位に汲み上げてやる必要がある。これをポンピングと言い、半導体レーザーや発光ダイオードなどでは、pn接合に電流を注入することによりポンピングを行っている。 上側準位の電子は、電磁場が存在しなくてもある一定の割合で光を放出して下側準位に遷移する。これを自然放出と言う。自然放出は電磁場を量子化した時の不確定性に起因するもので、電磁場を古典論で扱う場合(半古典論)には導出できない。 これまでの密度行列の導出においては、粒子同士の衝突やエネルギー準位の揺らぎなどは考慮していなかった。しかし実際は、粒子の衝突などによって双極子の調和振動が乱され、双極子振動は減衰していく。これを電子緩和効果という。

  38. このような効果を現象論的ではあるが付加してやる必要がある。このような効果を現象論的ではあるが付加してやる必要がある。 ポンピングによって上側準位の電子密度が増加(その分下側準位は減少するが、)する割合を Λp、自然放出による電子寿命時間(縦緩和時間とも言う)を τs、粒子同士の衝突などにより双極子振動が減衰していくが、その寿命時間(デコヒーレンス時間)(横緩和時間とも言う)をτd とする。ポンピングと自然放出は、密度行列の対角要素に付加され、双極子の寿命時間は非対角要素の変化として導入される。従って、これら現象論的な補正をした方程式として、 2準位系での相互作用 ρbb Wb 自然放出 τs ポンピング Λp Wa ρaa が得られる。

  39. 次に、微分方程式 の解を求めてみる。 電場が存在しない場合、上の方程式は同次方程式 2準位系での分極率 となり、その解は の形となる。ただし C は任意定数。そこで、電場が存在する場合については U(t)を変数として、 と表わせると考え、これを式(4)に代入すると、 となる。

  40. の関係が得られる。 従って、 電場 E を と表し、上式を時間に関して積分すると、 2準位系での分極率 となる。 積分時間内 0 ~ tで (ρaa – ρbb)Rabは一定とみなすと、 次のスライドに続く、、、、

  41. 2準位系での分極率 ここで、t >> τdの定常状態を考えると      であるから、 となる。

  42. さらに ω≈ωbaであるから、{ }内の第1項の分母の虚部はほぼ 0 となるが、第2項の分母の虚部はかなり大きい。従って、 { }内の第2項は無視できる。そうすると、 となる。 2準位系での分極率 同様にして ρba も求められるが、ρba は ρab の複素共役であり、 ρba=ρ*ab である。 となる。 ところで、古典電磁気学において分極 P は、 で与えられた。 従って、 ただし、Δtは 1/ω の数倍程度の時間間隔をとることとする。

  43. ところで、双極子能率 Rは、R = erと表わせたが、これを量子力学的な演算子とし、電子密度を Ntとすると分極 P は、 となる。 2準位系での分極率 従って、 となる。 ただしここでは、前にも述べたように Raa = Rbb = 0 と見なしている。

  44. 分極率 χの虚部は、それが正の場合は光を増幅する割合を示す光学利得定数を、負の場合は光減衰係数を表わしている。つまり、光学利得定数 gは、 光増幅利得 となる。 磁性体でなければ、 準位 bと aに存在する電子数の合計は単位体積当たり Ntである。準位 bの電子密度を Nb、準位 aの電子密度を Naとする。ρbbと ρaaとは電子分布の比率を示すので、 と書かれる。従って光学利得定数は、 となる。

  45. ポンピングを行わない熱平衡(thermal equilibrium)状態では、電子分布はMaxwell-Boltzmann分布に従い、Nb < Naであり、従って光学利得定数 gの値は負となる。つまり、媒質によって光が吸収される。これを光物性学では、基礎吸収と呼んでいる。一方、ポンピングによって Nb > Naが実現されると、利得定数が正となり、光が増幅されて出てくる。これが誘導放出である。 Nb > Naの状態を反転分布(population inversion)という。また、Nb = Naの時、媒質は透明となる。 反転分布 エネルギー E E Wb Wb Nb Nb Wa Wa Na Na 粒子数 N 粒子数 N 熱平衡状態 (Nb <Na) 反転分布 (Nb >Na) Maxwell-Boltzmann分布 k:ボルツマン定数 T: 媒質の温度

  46. Re χ Re χ 分極 Pに光電場 Eiが入射する場合、 ωba ω ω と表わせ、Im χ が負の場合、分極は入射光 Ei より 0 ~ π/2 位相が遅れて振動する。この分極によって放射される光電場 Erは、 Δzを分極が存在する範囲として、 ωba 光増幅のメカニズム Im χ Im χ ω ω ωba ωba と表わされ、分極振動に対してπ/2 位相が遅れて放射される。従って、出力光電場は EiとErとの合成となるため、出射光は減衰する。(右図) ρbb < ρaa ρbb > ρaa 一方、Im χ が正の場合、分極は入射光 Ei より 0 ~ π/2 位相が進んで振動する。この分極によって放射される光電場 Erは分極振動に対してπ/2 位相が遅れて放射される。従って、出力光電場は増幅される。 P 0 ~ π/2 0 ~ π/2 Ei Er Eout Ei P Eout Er 減衰 増幅

  47. レーザー 正帰還回路 光の正帰還回路 光増幅媒体 Amp. + 鏡 電気の発振器 レーザー 物質(原子系)と光との相互作用 以下の3つの課程が同時に起きている 電子など E2 減衰 増幅 発光 入射光 出射光 入射光 出射光 E1 二準位系 (原子など) 光の吸収 誘導放出 自然放出 レーザとは、光の発振器 光増幅媒体とはどのようなものか?

  48. 熱平衡状態 Maxwell-Boltzmann分布 E k:ボルツマン定数 T: 媒質の温度 n2:励起状態の原子数 E2 誘導放出 E1 吸収 吸収 吸収 P(E) 熱平衡状態では、励起準位の原子数は基底準位の原子数よりも少ない n1>n2 n1:基底状態の原子数 A: アインシュタインのA係数 自然放出の起きる確率 = An2 B: アインシュタインのB係数 吸収の起きる確率 = Bn1 I 誘導放出の起きる確率 = Bn2 I I: 入射光の強度 正味では減衰 Bn1I > Bn2I 熱平衡状態では、吸収の確率 > 誘導放出の確率となり、入射光は減衰して出てくる

  49. 反転分布 反転分布 Tが負(負温度状態) E n2:励起状態の原子数 E2 誘導放出 誘導放出 E1 吸収 誘導放出 P(E) 励起準位の原子数が基底準位の原子数よりも多い状態を反転分布という n1:基底状態の原子数 n1<n2 正味では増幅 Bn1I < Bn2I 反転分布では、誘導放出の確率 > 吸収の確率となり、入射光は増幅されて出てくる レーザーとは、何らかの方法で反転分布を作り出し、放射の誘導放出(Stimulated emission)を用いて光を増幅する装置

  50. レーザー レーザー(laser)の語源 light amplification by stimulated emission of radiation 光増幅 誘導放出 放射 メーザー(maser) microwave amplification by stimulated emission of radiation レーザーの種類 A. 固体レーザー a. 結晶体レーザー ルビー(Cr3+: Al2O3)レーザー 1960年世界で最初に発振したレーザー。 光励起で発振。λ = 694.3nm(赤) Nd3+: YAGレーザー λ = 1064nm(近赤外) b. ガラス・レーザー 光学ガラスにNdを ドープ。高出力

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