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医事法2009

医事法2009. 東京大学法学部  21 番教室              nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp 樋口範雄・児玉安司 第9回 2009 年6月17日(水) 16:50 ー 18 : 30 第6章 対面診療 医師法20条 1) 医師の対面診療義務とは何か。 2) 遠隔医療の意義と法的な問題点を考える。 参照→ http://ocw.u-tokyo.ac.jp/. 先回の補足. 医業独占と資格制度 資格制度に伴う「ご褒美」の必要性  ①医師による独占と看護師による独占  ② delegable duty という仕組み

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Presentation Transcript


  1. 医事法2009 • 東京大学法学部 21番教室             nhiguchi@j.u-tokyo.ac.jp樋口範雄・児玉安司 第9回2009年6月17日(水)16:50ー18:30 第6章 対面診療 医師法20条 1) 医師の対面診療義務とは何か。 2) 遠隔医療の意義と法的な問題点を考える。 参照→http://ocw.u-tokyo.ac.jp/

  2. 先回の補足 医業独占と資格制度 資格制度に伴う「ご褒美」の必要性  ①医師による独占と看護師による独占  ②delegable duty という仕組み delegation には責任も伴う      研修その他の基礎づけ 方向性は、各分野の関与者の能力・スキルアップ      競争的契機を入れること 

  3. 医師法20条 「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない」。 医師法20条の趣旨は、医師が自ら診察や立ち会い、あるいは検案をしないで一定の行為をすることを禁ずるところにある。 ①通常の患者に対しては、治療、診断書・処方せんの交付。 ②妊婦に対しては、出生証明書または死産証書の交付。 ③死体については、検案書の交付。ただし、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合の死亡診断書についてはこの限りでないとあるので、例外的に検案の必要がない。 20条違反、50万円以下の罰金が科される(医師法33条の2)。

  4. 医師法20条への視点 医療の問題 Access Quality Cost 本条はどれを問題としているか? 逆にどれが犠牲になっているか?

  5. 2008年度 医事法試験問題2009年2月4日(9時半~11時半)22番教室2008年度 医事法試験問題2009年2月4日(9時半~11時半)22番教室 問1 ある県のA市において次のような計画を策定中である。これについて、法律上の課題としてどのような点があげられるか、そしてそれをいかに解決すべきか論じてください。  1)ある県のA市は面積が広大でいわゆる山間僻地Pを含む。P地区にあるB診療所には、自治医科大学を卒業して数年の若い医師Xが1人だけ勤務している。P地区の居住者数は約500名、多くは高齢者だが、50名の子どももいる。経験の浅いX医師は、小児から高齢者まで、さまざまな病気の患者に毎日対応することになっている。そこで、県にある医科大学病院と連携して、X医師による医療を支える計画が立てられた。  2)具体的には、毎日、X医師は夕方以降、医科大学病院の専門医とパソコンを介して連絡し、患者の診療について相談することができる。さらに、緊急の場合には、X医師が行う手術をパソコンの画面で専門医が見ながら指導もする。  このような計画を策定中であり、弁護士であるあなたに助言を求めてきたと仮定し回答してください。

  6. 20条①の意義 イ)根拠のない医療(いわば、No-EBM, no evidence based medicine)が行われることを防止して患者の安全を図るため規定された部分、具体的には、通常の患者に対し、対面診療をせずに治療と処方せんの交付を行うことを禁ずる部分 ロ)診察・立会・検案なしに不正確な医療関係の証明書を作成することが社会に悪影響を及ぼすのを防止する部分、具体的には、通常の患者について診断書、出産・死産に関する証明書、死体検案書にふれた部分

  7. 通説への疑問 第1に、患者の安全を図る部分と社会への悪影響を防ぐ部分の関係はどのようなものか。 第2に、第1点に関連する可能性のある疑問点として、医師法 20条の私法上の効果は何か。私法上の効果を問題にするのは、必ず患者への影響が問題とされる場面となるが、医師法20条のうち患者の安全を図る部分については、患者の同意が何らかの効果を及ぼすのに対し、社会への悪影響という部分では患者の同意は無関係というような違いがありうるか。 第3に、医師法20条=「古色蒼然たる遺物」。現代の医療への適用の可否。たとえば遠隔医療と在宅医療の場面。

  8. 【20条違反の問題となった事例】 ①大正時代において、料理屋の経営者が雇用する酌婦につき、依頼を受けた医師が、診断をせずに、トラホーム、結核、ライ病、花柳病、てんかんなど伝染性の疾患がない旨の診断書を経営者に交付した事件。大審院は、医師法で禁止する無診察の診断書交付とは、患者本人ばかりでなく、第三者に交付する場も含むと判示した。 ②1913年7月26日に患者を診察し3日分の投薬を処方していたところ、8月18日になって患者の父から患者の病気不良のため往診を求められた医師が、多忙で往診が難しく、父から患者の容態を聞いて散薬3日分を父に与えた。大審院は、有罪判決を破棄し差戻した。 ③戦後、選挙の不在者投票ができるようにするため、医師が、選挙当日投票所に行けない状況にあるとの証明書を無診察で出したことが問題となった事件。1955年、最高裁は、このような証明書も診断書であり、医師法20条違反にあたるとした。 ④1970年代になると、知事が県の職員を1年間の休職処分にする際、2名の医師の診断が必要なのに、1名だけの診断だったと認定され、無診察で診断書を書いた医師の行為を違法(医師法20条違反)として休職処分を取り消した例がある。

  9. 医師法20条を医療過誤訴訟の中で利用する類型医師法20条を医療過誤訴訟の中で利用する類型 ⑤1975年大阪地裁。この事件では、40度に近い高熱を発した男性がおり、配偶者が歩いて5分以内の医院に往診を依頼する。しかし、医師は診察中であり、夕方なら往診可能と返事をして、解熱剤アセトアミノフェンだけを処方してもたせて帰す。患者との面識はいっさいなく、配偶者から話を聞いただけだった。帰宅した配偶者が解熱剤を飲ませると、患者は熱こそ下がったものの、悪寒を訴えるなど容態が急変し、救急車で大病院に運ばれたもののその日のうちに死亡した。遺族は、医師法20条に違反して処方がなされたことを過失立証の手段としたが、大阪地裁は、一般開業医の医療水準として、副作用を伴なわない安全な解熱・鎮痛剤として今日まで医家一般に広く使用されてきたアセトアミノフェンを処方した点に過失はなかったと判示した。 ⑥1984年の大阪高裁判決。交通事故で足の骨を折るなど重傷を負って入院した患者が痛みを訴え、ブスコパンの静脈注射でそれがおさまった翌日、やはり看護師に痛みを取るため同じ注射をしてくれと頼んだ。看護師が前日と異なる医師に相談したところ、医師は、前日の様子を知っており診察することなく看護師に注射を命じた。ところが、患者はショック死したというものである。遺族側は、医師法20条違反を根拠に医師の過失を主張したが、大阪高裁は、「医師の患者に対する診察は、患者個人に対する直接の触診、聴診、打診、問診、望診(視診)の方法に限られるものではなく、現代医学上疾病に対して診断を下し得ると認められる適当な方法によることができるのであるから、医学的知識経験に照らし特別の変化が予想されなかつた本件のような場合には、従前の診察の結果、患者の要望、看護婦の報告等に基づいて治療したとしても、無診治療ではなく、医師法二〇条に反する違法があるということはできない」として、その主張を退けた。 ⑦2000年千葉地裁。患者の叔母の相談を受けた精神科医が、妄想型精神分裂病と診断したうえで水薬を処方し、患者から、この行為は医師法20条違反であり不法行為にあたるとして訴えられた事件。判決は、この行為は、形式的に見れば医師法20条に反するように見えるけれども、病識のない精神病患者について家族からの相談に応じて薬を処方することは全国的にも少なくないこと、このような患者に適切な医療を受けさせるための法的、制度的なシステムが十分に整っていないこと、この慣行を否定すれば患者と家族にとって酷な結果を招くとして、不法行為の成立を否定した。

  10. ⑧教科書設例。胃潰瘍の治療のため近くの内科医を受診し、数ヶ月にわたって投薬治療を受けた患者が、いったん治療が効いて半年間受診を中断した。ところが、その後、激しい胃痛に見舞われ、内科医に電話で相談したところ、医師は症状を聞いたうえで「前回と同じ薬を出しますから取りに来てください」と回答し、患者の配偶者が医院に出向き処方せんを入手、薬局で薬を購入した。この場合の内科医の行為は医師法20条違反にあたるか否か。⑧教科書設例。胃潰瘍の治療のため近くの内科医を受診し、数ヶ月にわたって投薬治療を受けた患者が、いったん治療が効いて半年間受診を中断した。ところが、その後、激しい胃痛に見舞われ、内科医に電話で相談したところ、医師は症状を聞いたうえで「前回と同じ薬を出しますから取りに来てください」と回答し、患者の配偶者が医院に出向き処方せんを入手、薬局で薬を購入した。この場合の内科医の行為は医師法20条違反にあたるか否か。 これに対する一応の回答としては、前日まで診療を継続してきたような場合であれば、電話での指示も無診察行為とはいえないが、数ヶ月にわたる治療中断後、あらためて診察することなく同一の薬剤を処方するのは違法だとされ、大正3年の判決が引用されている。 ⑨保険の関係や訴訟上の理由で、過去に入院していた病院に診断書を請求する場合がある。その時点で、患者の担当医が転勤や死亡で当該病院にいないケースがままある。カルテは保存されているが、それだけを見て、代わりの医師が診断書を作成することは医師法20条に違反するか。本来の担当医の作成したカルテの記載だけを代行したもので適法。 ⑩救急救命士法は、医師の具体的指示を受けなければ一定の救急救命措置を行ってはならないと規定する(救急救命士法44条)。その措置の内容は、救急救命士法施行規則21条とそれに基づく厚生労働大臣の通知に委ねられている。近年AED(自動式体外除細動器)など従来指定されていた一定の行為がそのリストから外されて救急救命士だけの判断で行うことのできる範囲が広げられているが、心肺機能停止状態の患者について、一定の薬剤を用いた静脈路確保のための輸液、一定の器具による気道確保、そして一定の薬剤の投与については、「医師の具体的な指示」を受けて実施することになっている。しかし、救急の現場に医師がいるとは限らないから(それはむしろ稀であるから)、電話等で連絡し医師の指示を仰ぐことになる。だが、医師は一度も診察したことのない患者について、電話の説明だけで具体的な指示をすることになる。それは医師法20条に違反しないか。

  11. 医師法20条の趣旨再考 【実際の運用から見えてくるもの】 医師法20条の具体的適用例から、何が見えてくるか。 第1点。判例に現れた事例だけからいうと、根拠のない医療を排して患者の安全を図るという目的のため、対面診療の原則を徹底しているということはなさそうである。それに比べて、社会に悪影響を及ぼす場面では、より積極的な適用が図られているという印象を受ける。  第2点。限られた判例ではあるが、裁判所は、医師法 20条違反を私法上の効果と結びつけることには消極的であるように見える。 医師法19条の場合とは対照的である。

  12. 遠隔医療 「ある朝、まだ赤ん坊の子どもの泣く声とゼーゼーと息をする音で目が覚めた。女の子は泣きやまず、熱を測ると40度もある。救急病院は40キロ離れており、外は吹雪である。母親はコンピュータを立ちあげて、インターネットで喘息に詳しい小児専門医を探した。1人見つかり、そのウェブサイトにつなぎ、医療保険の情報を打ち込むことにより、医療記録の提供を行った。保険情報の正確なことが確認されて、医療記録を検討した後、専門医が画面上に現れ、1つ薬を試してみるように指示した。両親はその指示に従い、インターネット上の薬局に行き、そこで専門医がネット上で出した処方箋により、直近の薬局が処方箋を受けて1時間で薬が配送された。 医師法20条の壁

  13. 医薬品の対面販売問題 • ケンコーコムとウェルネットは2009年5月25日,医薬品のネット販売や通信販売を一部を除いて禁止する省令が違憲であり無効であるとして,国を相手取り提訴した。 •  厚生労働省が2009年6月1日に施行する「薬事法の一部を改正する法律」の省令により,安全確保のための対面販売の原則を理由に,第1類医薬品および第2類医薬品の通信販売が禁止となる。ただし2年間の経過措置として,離島と継続使用に限って通信販売を認める経過措置をとる。

  14. 遠隔医療 • その目的と有用性は何か 1 僻地・遠隔地ということか 2 むしろ医療の質の確保か 3 患者の便宜か

  15. 2001年12月厚生労働省「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」2001年12月厚生労働省「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」 1)家にいながらにして、自分の症状や病気につきわかりやすい情報が入手できる。さらに医療機関に行く場合、どの医療機関がこの場合最適かを選択する情報も入手できる。 2)医療機関では、予め、自らの症状などの情報を伝送し、予約していくため、待ち時間は短くなり、必要な検査の予測など診察が効率化する。 3)他の専門医の意見を聞くいわゆるセカンド・オピニオンも簡単に得られるようになる。さらには、医療機関に行くことなく専門家の判断を仰ぐことのできる遠隔医療も可能になる。 4)医療情報の広がりの結果、全国どこの医療機関でも最新かつ標準的な医療が行われるようになる。医療事故も減少する。インシデント事例が広く収集され、全国の医療機関で共有されるようになれば、事故につながりかねない処置が、情報欠如のために他でも繰り返されて事故に至ることがなくなる。また、コンピュータは、人の過ちや見落としをチェックするセーフガード機能ももつ。 5)医療従事者と患者とのコミュニケーションの時間が長くなる。情報化によって、治療以外の業務にとられていた時間が減少する。 6)医療の効率化は、国全体の医療費削減につながる。電子標準化により医療事務が効率化し、医療事故も減少すれば、医療に関わる社会的コストが全体として削減される。

  16. 情報化のメリット 第1に、患者にとっての利便性が高まり、医療事故のリスクも減少する(上記、第1,2,3,4,5点)。 第2に、医療機関にとっても、医療サービス提供の効率化が行われ、事故防止および、さらに質の高い医療を目指すことができる(上記、第4、5点)。 第3に、その結果、社会全体も利益を得る。より質の高い医療が国民に効率的に提供され、かつ医療費削減も図れるなら言うことはない。

  17. 情報化への環境整備 1 コストを誰が負担するか 2 情報弱者の保護 3 個人情報の保護 より大きな視野では 1)医師患者関係の見直し 2)競争の激化(空間的距離を超える) 3)規制のあり方の見直し

  18. 在宅医療と医師法20条 1 遠隔医療・電話相談等の活用 2 在宅で死ぬことを阻害      死亡診断書と警察の介入

  19. 各種医療関連助言サービス • 医師法20条との関係が問題となる • 特派員・海外駐在員とその家族 • 何のための規制かがあらためて問われる

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