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液体の積分方程式理論の解法と 電子状態計算との連成時の問題. " アルゴリズムによる計算科学の融合と発展 " 2009/04/22-23 吉田紀生 分子科学研究所. はじめに. 液体の積分方程式理論 液体の構造を統計力学に基づいて記述する理論 連立方程式を繰り返し計算により解く 畳み込み積分を解くためにフーリエ変換を用いる 電子状態理論との連成 溶媒和分子の電子状態に溶媒効果を加えるのに効果的な方法 溶媒和フォック行列の計算、静電ポテンシャルの計算が律速に 有効な高速化手法を模索中 ・・・. 液体の積分方程式理論とは. 液体の積分方程式理論とは
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液体の積分方程式理論の解法と電子状態計算との連成時の問題液体の積分方程式理論の解法と電子状態計算との連成時の問題 "アルゴリズムによる計算科学の融合と発展" 2009/04/22-23 吉田紀生 分子科学研究所
はじめに • 液体の積分方程式理論 • 液体の構造を統計力学に基づいて記述する理論 • 連立方程式を繰り返し計算により解く • 畳み込み積分を解くためにフーリエ変換を用いる • 電子状態理論との連成 • 溶媒和分子の電子状態に溶媒効果を加えるのに効果的な方法 • 溶媒和フォック行列の計算、静電ポテンシャルの計算が律速に • 有効な高速化手法を模索中・・・
液体の積分方程式理論とは • 液体の積分方程式理論とは • 液体の状態・構造を記述する理論 • 積分方程式(Ornstein-Zernike方程式)とclosureの連立方程式 • 1,2は分子1,2の座標・配向を表す • 分子性の液体を扱うための様々な解法が提案されている
液体の構造とは?気体と固体の場合は? 気体の構造 特定の構造を持たない 固体の構造 格子定数で一義的に決まる (6つのパラメータ)
液体の構造 ある一定の構造を持っているが、格子点では表現できない ある粒子に注目したとき、その周りに他の粒子が平均的にどのように分布しているかを見る
液体の構造と分布関数 動径分布関数 密 密 密 密 r 疎 疎
分布関数から計算出来る系の熱力学量 分子間ポテンシャル 内部エネルギー: 圧力: 圧縮率:
RISM, 3D-RISM, MOZ • 分子性液体 • 2体の相互作用の記述には6次元の関数が必要(系全体の回転・並進不変性) • 分子1,2の配向とそれらを結ぶベクトル • 液体の積分方程式理論の種類 • Molecular Ornstein-Zernike (MOZ)理論 • Reference interaction site model (RISM)理論 • Three-dimensional RISM (3D-RISM)理論
MOZ (MOLECULAR ORNSTEIN-ZERNIKE) • 分子の配向をすべて考慮(自由度は6次元) • 多極子展開を用いる • 多極子展開の収束の悪さから大きい分子への応用は難しい • 近似が少ないため、物理量の再現性も良く高精度な計算に向く • 反面、計算コストは高い • 多極子展開をどこまでとるかに依存
RISM (REFERENCE INTERACTION SITE MODEL) • 分子を作用点(interaction site)に分け、その作用点間の距離のみを扱う(自由度は1次元) • 自由度が1次元なので軽量で高速、応用範囲が広い • 反面、誘電率を再現出来ない点や異方性の強い分子には向かないなど欠点も • 計算コストは • (距離グリッド数)x(分子1のサイト数)x(分子2のサイト数)
3D-RISM (THREE-DIMENSIONAL RISM) • 分子を座標に固定し、分子2の作用点の位置ベクトルで記述(自由度は3次元) • 分子1からの分子2の位置情報を得られる • 複雑な溶質(分子1)を扱うことが出来る • 計算コスト • (グリッド数)3x(分子2のサイト数)
計算コストと対象とする系の比較 いらない子のように思えるが、「理論的厳密性」が高いため高速に計算出来ればそれなりに需要はあるはず… 3D-RISM たんぱく質 DNA ナノチューブ 〜 対象分子の規模 RISM アミノ酸 核酸 〜 MOZ 単純な分子 (H2O, CH3CN) 計算コスト
RISM • Molecular Ornstein-Zernike • Site-Site Correlation functionの導入 • RISM equation
3D-RISM • RISMと異なり、分子2についてのみ平均化 • 3D-RISM equation • フーリエ変換により • Closure
3D-RISMの基本的アルゴリズム • 3D-RISM equation と Closureをiterativeに解く solute-solvent interaction potential solvent-solvent correlation term
グリッドと離散化 • 相関関数の離散化 • グリッド • 3次元直交グリッド • 離散フーリエ変換 z y x
LONG-RANGE INTERACTION • 直接相関関数の長距離挙動 • 有限のセルサイズでは、離散フーリエ変換の精度悪化 • 直接相関関数の分離 1/r が収束が悪い 振る舞いの良い関数 解析的にフーリエ変換可能
LONG RANGEの問題を考慮した場合のアルゴリズム 3D-FFT
収束テクニック • MDIIS (Modified direct inversion in the iterative subspace) • メリット • ロバスト • MDIISのルーチン自体が軽量 • デメリット • メモリを大量に消費 • Newton-Raphson • メリット • 収束性するときは速い • デメリット • Jacobianの計算が重い • 良い初期値を必要とする
MDIIS 3D-RISM {cn}の計算
NEWTON-RAPHSON + PICARD HYBRID • τ(あるいはc)をcoarse partとfine partにわけ、それぞれにNewton-Raphson、Picard法を適用する • Pはroof function, JはJacobian • coarse partとfine partを決めるための2重ループを行う 3D-RISM Jacobian の計算 Δτは固定 coarse part fine part aの収束判定 Δτの更新 τの収束判定
積分方程式理論と電子状態理論の連成 • 積分方程式理論で電子状態理論を組み合わせることで、溶液内分子の電子状態に溶媒効果を効率的に組み込む • 溶媒と溶質は互いに相互作用する • RISM-SCF (Ten-no et al.) • 3D-RISM-SCF (Sato et al.) • MOZ-SCF (NY et al.) 溶媒(g(r)) 溶質(Ψ) 溶質の電子状態(Ψ)と溶媒の分布(g(r))を 自己無撞着に決定。
3D-RISM-SCF • Quantumに扱う溶質が液体論で古典的に扱われる溶媒中に無限希釈で溶けている状態を考える • 系のTotal Helmholtz Free energyは • 溶質の寄与 • 溶媒の寄与
FORMALISM OF 3D-RISM-SCF • Lagrangian • これは相関関数(c, h, τ)および溶質の波動関数(ϕi)およびMO係数の汎関数と見なせるので、偏分は
SCHEME OF 3D-RISM-SCF 真空中で溶質となる分子の電子状態を計算 溶質分子が作るポテンシャルを計算 3D-RISMを解く グリッド数回の1電子積分が必要 グリッド数回の 1電子積分が必要 溶媒分布からSolvated Fock Matrixを計算 溶媒分布の下での溶質分子の電子状態を計算
静電ポテンシャル計算の高速化 • 静電ポテンシャル計算、およびSolvated Fockの計算が3D-RISM-SCFのボトルネック • 2563回の1電子積分・・・ • 高速化のアイデア • 1電子積分を高速化 • Pople-Hehre • Martyna-Tuckerman • フーリエ変換 • 1電子積分を減らす • 有効静電ポテンシャル(ESP) 精度を維持して高速化 精度を犠牲にするが圧倒的に高速化
有効静電ポテンシャル法(ESP) • 分子の周りに分子自体が作る静電ポテンシャルを再現するように、分子上に点電荷を配置する方法、またはそれによって決められた点電荷のこと • 静電ポテンシャルをフィッティングするための数千〜数万点の1電子積分で済む • 点電荷は通常、溶質分子の原子核上におく(かならずしもその必要はないが・・・) • π軌道などの再現は難しい(芳香族-芳香族相互作用等) • 分子内部に埋もれた原子の点電荷の決定には難あり
ESP • 位置rに溶質がつくる静電ポテンシャルは • 各原子核上の部分電荷 , ,を用いたモデルポテンシャルは • 原子核の分はとおけるので以下では扱わない 原子核の寄与 電子の寄与
ESP • は最小二乗法で決定 • ω、l、λはそれぞれサンプル点の重み、サンプル点、Lagrangeの未定乗数 • この式から • この方法によれば1電子積分はたかだかl回のみ • グリッド(サンプル点)の生成方法にもよるが、有機分子程度で数百〜数千、アミノ酸等でも数千〜数万点
3D-RISM-SCFでのアイデア 電子交換反発などが主体になる様な距離)ではそもそも静電ポテンシャルの計算の必要はない • 3D-RISMの利用を考えた場合、空間を3つの領域に分けてそれぞれ扱いを変えてやる • 問題点 • 領域IIとIIIの間で不連続が発生する • IIの領域の高速化が依然としてネック • ここは専門家に任せたい 分子近傍は波動関数の広がりを考慮した静電ポテンシャルを用いる 十分離れたところでは点電荷がつくる静電ポテンシャルで近似
まとめ • 3D-RISM自体の高速化は以下の2点が問題 • 3D-FFTの高速化・高並列化 • 反復回数を減らす • 電子状態との連成では • 静電ポテンシャル/溶媒和フォックの計算 • 近似的なアプローチ(ESPなど) • 1電子積分自体の高速化