大阪商業大学 OBP コース２年 プライミクス研究チーム 田中 史子 海原 大輝 胡子 遼 平田 拓嗣

1. 2010.12.12 中小産業財企業の経営革新～プライミクスにおける「経営品質」の追求～ 大阪商業大学　OBPコース２年　プライミクス研究チーム 　　田中 史子　　海原 大輝　　胡子 遼　　平田 拓嗣　 　　 （Fumiko Tanaka) (DaikiUmihara) （Ryo Ebisu） 　　(HiroshiHirata) 日経ビジネス　西日本合同研究会

2. アウトライン 会社概要 　 研究理由 経営革新の背景 経営品質とは プライミクスの経営品質向上活動 顧客・市場の理解と対応 来社テスト 『おISO チェック』 個人と組織の能力向上 バランススコアカード 困難でいいんかい活動 マネジメントセミナー ベストプライミクス 活動結果 活動結果（１） 活動結果（２） 今後の課題 インプリケーション 参考文献

3. 会社概要

4. 会社概要 創業：1927年4月17日 資本金：8,019万円 代表取締役社長：古市　尚 本社：大阪府大阪市福島区海老江8－16－43 社員数：191名 売上高：51億円(2008年度） 経常利益：3億4,800万円（2008年度）

5. 会社概要 企業間取引を主とした 高速撹拌機の専門メーカー （用途：医薬品、化粧品、化学品、食品等） • 2004年　「特殊機化工業」から「プライミクス」へ社名変更 • 最上の人、知識、技術の存在を示す「PRIME」と • 企業ドメインの撹拌を意味する「MIX」を結合 • 「PRIME」＋「MIX」＝PRIMIX

6. 研究理由

7. 研究理由 日本の大学生の就職希望の傾向 『大学生が選んだ就職先人気企業Ranking2010』（「就活ナビ」ダイヤモンド・ビッグ＆リード社調べ） 文系・男子 文系・女子

8. 研究理由 大学生の就職希望先は 大企業や消費者に直結する企業に集中！ 有効求人倍率(求職者1人当たりの求人件数) →大企業：0.6/1人、中小企業：3.6/1人 (厚生労働省2010年3月データより) 企業と学生の間にギャップが生じている！ プライミクス 優秀な人材の採用が困難 Ｂｕｔ！

9. 研究理由 2009年度　 関西経営品質賞受賞企業 なぜ大阪の下町の中小産業財企業が 経営品質賞を受賞する企業へと成長できたのか？ 同社の経営革新施策について研究

10. 経営革新の背景

11. 経営革新の背景 プライミクスは1947年に 国内初の撹拌機開発に成功した 高速撹拌機メーカーのパイオニア企業 しかし、それに甘んじてあぐらをかいた 怠惰な経営によってプライミクスは 競争優位を失っていく・・・ 廊下で会っても挨拶もしない 電話で社名を名乗らない（殿様商売） 誰一人としていきいきと働いていない

12. 経営革新の背景 古市　尚社長就任時（2004年当時）のプライミクス 　中小産業財を扱う地味な企業に自ら望んで 入社する者はおらず、ただ業務をこなすだけの社員の姿 自社のブランディングをするため、経営品質向上活動を開始 「活気のない職場」 古市　尚　社長 • 「この会社で子どもの頃から世界一の撹拌機を • 作るんだという思いで入社した人はいないだろう」 社員が誇りを持ち、好きになる会社

13. 経営品質とは

14. 経営品質とは 定義 企業が長期に渡って顧客の求める価値を創出し、 市場・社会での競争力を維持するための 「経営自体の仕組みのよさ」（井口・江崎1997）

15. 経営品質とは 背景 1980年代後半、産業競争力の低下に苦しんでいた米国は、米国企業の市場シェアを奪うほどに成長していた日本企業に対し、国家プロジェクトとして日本企業に対する徹底的なベンチマーキングを実施 日本企業の強みは、高い「経営品質」にあると解明 →米国は経営品質をフレームワークに整理したマルコム・ボルドリッジ賞（MB賞）を創設 日本では、バブル崩壊後の国際競争力衰退に際して、 経営品質の見直しを図るため、1995年に「日本経営品質賞」を創設

16. 経営品質とは • 経営品質のフレームワーク ３．顧客・市場の理解と対応 方向性と推進力 業務システム 結果 １．経営幹部のリーダーシップ ４．戦略の策定と展開 ８．活動結果 ５．個人と組織の 能力向上 ２．経営における社会的責任 ６．顧客価値の 創造プロセス ７．情報マネジメント

17. プライミクスの経営品質向上活動 顧客・市場の理解と対応 ①来社テスト ②『おISOチェック』

18. プライミクスの経営品質向上活動 顧客・市場の理解と対応 ①来社テスト 大阪・埼玉の２拠点にそれぞれ３ヶ所のテスト室を完備 → この来社テストの結果から 顧客の要望に応え、各企業に合った撹拌機を製造 従来のレディメイド型からオーダーメイド型へ転換 →取引先へ安心感を与え、顧客満足が向上 顧客自身が実際に取り扱う原料等を持参、 希望通りの製品が作れるか試運転を行って確認

19. プライミクスの経営品質向上活動 顧客・市場の理解と対応 　　②『おISO　チェック』 　　プライミクス独自のWebアンケートシステムを開発 顧客の評価が低い場合 経営陣へ報告、再発防止や改善を実施 　　→その後、社内イントラネットでの公開により 部門間でも情報共有 この結果を顧客が閲覧できるサイトを設置 　　　→他社のレビューを製品購入の参考資料として活用 各部門毎で社員が顧客と接する 　　　様々な場面ごとに質問項目を決定 PRIMIX　お客様アンケート ・ご注文時 HPやカタログの商品紹介が× 　見積金額が× 　資料内容が× 　・搬入時 　　　　施設への気配りが× 　　　　後片付けが× 　　　　納入が遅れた 　・ご操作の時 　　　　取説内容が× 　　　　振動騒音レベルが× 　　　　安全対策が×

20. プライミクスの経営品質向上活動 個人と組織の能力向上 ①バランススコアカード ②困難でいいんかい活動 ③マネジメントセミナー ④ベストプライミクス

21. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ①バランススコアカード 財務的目標に加え、顧客、業務プロセス、 　学習と成長といった、非財務的目標も含んだ 　目標管理制度（ＭＢＯ）を活用 １．財務 業績はよいか ２．顧客 顧客は満足しているか 企業のビジョンと戦略 ３、業務プロセス 効率よく 仕事をしているのか ４、学習と成長 従業員の能力は 向上したか

22. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 中期経営計画 ①バランススコアカード 「中期経営計画」に基づいて BSCを全社、部、課、と 各層毎に作成 各個人も目標達成に向けた アクションプランを 個人重点実施項目に落とし込む （目標のブレイクダウン） 個人、課、部、全社と段階的に 目標が達成される仕組み 重点施策の明確化 全社BSCへの展開 達成状況を賞与に反映 部単位BSCへの展開 課単位BSCへの展開 個人重点実施への展開 定期的評価（PDCA） 次期サイクルへの展開

23. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ②困難でいいんかい活動 プライミクス独自の職制とは別の クロスファンクショナルな活動 →組織にとって潜在的なリスクである 　　　　　　　　　　　　　　セクショナリズムを防止 現場で働く社員の意見も経営に取り入れる →社員一人ひとりが 組織の一員という自覚が高まる 「組織の横串」+「社員の経営参加」

24. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ②困難でいいんかい活動 　→主に５つの委員会を軸に展開 委員会活動 ステークホルダー 社内の声（社内懇談会） 社員代表で構成 安全衛生委員会 表彰委員会 広報委員会 ES委員会 CS委員会 Thinking Party 改善改良案をUP 管理職 のみで構成 経営戦略会議、開発会議、品質会議 マネジメントセミナー（社長）から、社員へ報告

25. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ②困難でいいんかい活動 　具体的活動例：ES委員会の場合 社内満足度調査の実施 「早く帰りやすい 体制作り」 「怪偽をやめよう会議を やろう」ポスターの作成 社員満足度調査の 実施 ↓　　　　　　　　　　　　　　　　　 「おISOチェック」 システムの利用 ↓ 結果を社内の イントラネットで すべて公開 19：15に「帰ろう」のテーマ曲を流す ‖ 終了時刻を決める ↓ 業務が効率化

26. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ③マネジメントセミナー ２ヶ月毎に本社や支社３拠点へ社長自ら出向き、全社員へ報告 経営計画のコンセプト、経営理念の内容等も関連付けて報告 その後、社員はフォローシートに感想や意見を記入 →社員の気づきや改善提案意見などから理解状況を把握 会社の取り組みに対する理解度の向上 直近2カ月の業績状況 新しい 活動の内容 各委員会 活動の報告

27. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ④ベストプライミクス 「ありがとうカード」 →管理職を除く社員同士が感謝の気持ちを伝えあうカード 配布対象：管理職を除く全社員 実施頻度：毎年1回 集計期間：1年間 年間で最も多くもらった社員→　ベストプライミクス 特典：約1週間の海外研修旅行

28. プライミクスの経営品質向上活動 ⅱ.　個人と組織の能力向上 ④ベストプライミクス 受賞者の声（経営戦略室長、永井康子さん） 社員同士が公平な目線で互いを評価 他部署の人からの評価もあるので自分の頑張りを見てもらえているのだと実感すると同時に、 更に頑張ろうと意欲が出る 一緒に働く社員からの評価なので純粋にうれしい 社員のモチベーションアップ 社員同士のコミュニケーション改善

29. プライミクスの経営品質向上活動 活動結果 ①活動結果（１） ②活動結果（２） ③今後の課題

30. プライミクスの経営品質向上活動 ⅲ.　①活動結果（１） 会社に対する社員の提案が増加 同社に対するクライアントの評価が改善 　クレーム件数の減少 景気に左右されない順調な成長

31. プライミクスの経営品質向上活動 ⅲ.　②活動結果（２） 新入社員の離職率の低下 2005年　50％ 2008年・2009年0％ 　中小企業かつ産業財企業という若者に不人気な業態でありながら、 愛社精神を持つことができる仕組みを構築した結果 長年にわたる経営品質向上に対する 真摯な取り組みと顧客本意の姿勢、 技術力と併せて同社のものづくりに対する経営姿勢が高評価 『大阪ものづくり優良企業賞2010』 最優秀企業賞を受賞

32. プライミクスの経営品質向上活動 ⅲ.　③今後の課題 【プライミクスにおける今後の課題】 海外事業の推進 海外進出は未だ緒についたばかり（2004年に初の現地法人を設立） →国内市場は飽和していることから新興国市場も視野に入れるべき ②イノベーティブな新製品を開発する仕組み作り 社員の間でもモデルチェンジの製品が多いとの声 来社テストやおISOチェックなどで蓄積された顧客データを有効活用すべき →新製品開発へ向けての体制を整える

33. インプリケーション

34. インプリケーション① 経営トップのリーダーシップ 「リーダーの真に重要な任務は企業文化の　創造と管理である」（Schein1985） 社長自らがアセッサー第１号となり 経営品質向上活動に着手して経営を革新 顧客が満足し、社員がいきいきと働く企業文化を形成

35. インプリケーション② プロダクトアウトからマーケットインへ 顧客本位のビジネスモデルを構築 プロダクトアウト：同社のシーズから作り手の視点で市場へ供給 マーケットイン：市場が求めるモノを同社のシーズを生かして開発 来社テスト・おISOチェック クライアントのニーズ プライミクスのシーズ コンサルティング型営業によるソリューションを提供

36. インプリケーション③ 透明性の高い組織運営 小規模という中小企業の利点を生かした 「風通しの良い」経営スタイルを追求 高い経営品質の実現

37. 参考文献

38. 参考文献① Schein,E,H.（1985）　Organizational Culture and Leader ship,Jossey-Bass.清水紀彦、浜田幸雄訳（1989）『組織文化とリーダーシップ―リーダーは文化をどう変革するか』ダイヤモンド社 井口不二夫・江崎昌男（1997）『「日本経営品質賞」とは何か』生産性出版 『関西生産性本部機関紙　KPCNEWS』　５・６月号 『関西生産性本部機関紙　KPCNEWS』　７・８月号 『生産性新聞』2010年5月25日付　４面 『プライミクス株式会社　2009年度経営品質報告書』

39. 参考文献② 株式会社プライミクス本社HP (2010.5.7) http://www.primix.jp/index.html 経営品質協議会HP(2010.10.20) http://www.jqac.com/index.htm 関西エグゼクティブサイト　古市社長インタビュー(2010.5.7) http://www.top-kansai.com/executive/interview/detail.php?id=141 ダイヤモンド・ビッグ＆リード社　 就活ナビ2011年卒業生向け就職情報サイト(2010.9.1) http://www.diamond-lead.co.jp/ranking10/index.html ＜プライミクスへのヒアリング調査＞ 関西経営品質賞受賞式　(2010.4.19.) プライミクス本社訪問　(2010.5.7・2010.10.18) 経営イノベーション・フォーラム２０１０ 　「２００９年度　関西経営品質賞報告会」(2010.5.26）

40. ご清聴ありがとうございました。 Thank you for listening.