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薬剤疫学

薬剤疫学. 日本薬剤疫学会. 2010 年 8 月. 1. 1. 薬学の中の薬剤疫学 薬物療法の変遷とこれからの 薬剤師職能の展開. 2. 薬物療法の過去. 医師の独自の裁量により医薬品が選択され、患者は医師の指示通りに使用する。 薬剤師による医薬品情報活動により、より客観的な薬物療法が行われるようになった。 患者の自己決定権、セカンドオピニオンの採用、医療訴訟などを背景にインフォームドコンセント(説明、理解と同意)のもとに薬物療法が行われるようになってきた。. 3. 薬物療法の現在.

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  1. 薬剤疫学 日本薬剤疫学会 2010年8月 1

  2. 1.薬学の中の薬剤疫学薬物療法の変遷とこれからの薬剤師職能の展開1.薬学の中の薬剤疫学薬物療法の変遷とこれからの薬剤師職能の展開 2

  3. 薬物療法の過去 • 医師の独自の裁量により医薬品が選択され、患者は医師の指示通りに使用する。 • 薬剤師による医薬品情報活動により、より客観的な薬物療法が行われるようになった。 • 患者の自己決定権、セカンドオピニオンの採用、医療訴訟などを背景にインフォームドコンセント(説明、理解と同意)のもとに薬物療法が行われるようになってきた。 3

  4. 薬物療法の現在 • 医薬品の適正使用が定義され、薬物療法は医師、薬剤師ならびに患者が参加して行われることとされた。 • 医師は患者に適切な医薬品を選択する。 • 医師や薬剤師が患者に用法、用量、予想される副作用を説明する。 • 患者は説明を理解した上で指示通りに使用して、その結果を医師に報告する。医師はそれに基づいて処方を修正する。 4

  5. 薬物療法の将来 • 「個の医療」の展開 • 薬物動態学、薬力学さらにゲノム薬理学の研究の発展により、患者個人の遺伝子解析による薬物代謝酵素の解析が行われ、より適切な医薬品の選択、投与法の指示が可能となる。 • 医師の処方設計を国内外の薬剤疫学研究結果などに基づき支援し、同時に患者に服薬指導を行う薬剤師の存在は必要不可欠なものとなる。 5

  6. 薬剤師機能の展開 • 医療法、薬事法、薬剤師法がこの3年間で順次改正され、その方向はすべて良質で安全な医療における薬剤師の機能を期待したものである。 • 医療用医薬品のみでなく一般用医薬品においても来局者への説明責任が課せられ、薬剤師の機能は技術面は当然であるが患者や来局者への適切な情報提供も重要な部分を占めることとなる。 6

  7. 薬剤師機能の展開 2 • 薬剤師は、必要なら他の医療機関と共同で、医療機関での薬物療法を処方せんに基づいて薬剤疫学的な解析により有効性と安全性を検討することが可能となる。 • 薬剤師は国内外の薬剤疫学研究論文を十分に理解し、その成果を正しく医療現場に還元する能力を備える必要がある。 7

  8. 薬剤師機能の展開 3 • 法的にも、機能を支える技術面での発展を自らの機能に活かせる薬剤師の教育が必要となってきている。 • 薬学教育が6年制となって卒業生は即戦力として期待されている。 • 薬学教育の充実の必要性が指摘されているが、その中でも薬剤疫学の知識と実際に解析できる能力を身につけさせることは必要である。 8

  9. 薬剤師機能の展開 4 • 薬剤師は薬剤師機能の発揮に最善の努力をする必要がある。 • 薬剤師法第8条が改正されて罰則規定が設けられた。 • 戒告、業務停止、免許取り消し • その中に「知識・技術の欠如による過失」に対しても罰則が適用されることとなっている • 薬剤師はup-to-dateな知識・技術の獲得と実行に努めなければならない。 9

  10. 薬剤師の職能と薬剤疫学 • 薬剤疫学は、「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する研究領域」 • 医薬品の開発、使用実態調査、有効性や安全性を評価する方法論や技法を習得することで、その結果からより有効な医薬品の選択が可能となる。 • 薬剤師の大きな武器となりうる。 10

  11. 日本薬剤疫学会 薬剤疫学領域の研究発展およびその成果の普及を図ることを目的とする。 (ホームページ:http://www.jspe.jp/index.html) 【理事長挨拶】から 薬剤疫学は、人の集団における薬物使用による効果と副作用を疫学的手法を用いて研究する学問です。 仮説を明確にしてこれをテストする「正統的」疫学研究とともに、仮説の生成(新たな副作用の発見や、既知の有効性や副作用に関する新たな問題の発見など)も薬剤疫学の重要な分野です。 疫学研究を専門とする医師、薬剤師、統計家はもとより、より多くの医療関係者の学会への参加を願ってやみません。 11

  12. 2.薬剤疫学総論 12

  13. 疫学とは 「人の集団における健康の状況あるいは健康に影響する事象の発生を取り上げ、その分布および規定因子を研究して健康問題の制御に応用する学問」 13

  14. 薬剤疫学の目的・意義 「健康問題の制御」 → リスクを小さく、ベネフィットを大きくする医薬品の使い方 →適正使用の確立 市販後医薬品の使用を適正化すること 14

  15. Strom教授の定義 「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問」 意味:市販後医薬品の使用実態を研究し、有効性と安全性を評価する 15

  16. 市販前の臨床試験の限界 • Five “TOOs” • 症例数が少ない(Too Few) • 投薬方法が単純(Too Simple) • 投薬期間が短い(Too brief) • 対象者の年齢制限(Too median-aged) • 特殊な患者の除外(Too Narrow) 引用:Rogers A.S., Drug Intel Clin Pharm., 21: 915-20 (1987) 市販後の有効性、安全性を予測するためには不完全 16

  17. 市販後の調査の重要性 • 市販前に不十分であった有効性と安全性の評価を補う • 使用実態における有効性と安全性の状況を評価し、監視する。 • どのような人の集団に使われているか。 • その集団での有効性と安全性の評価をする。 • 薬剤疫学の考え方と方法論が有効となる。 17

  18. Pharmacovigilance • Pharmacovigilance:医薬品安全性監視 • 「医薬品の有害作用又は関連する諸問題の検出、評価、理解及び防止に関する科学及び活動」 • 医薬品が医療現場で使用されると新たな情報が生まれ、それは医薬品のベネフィット又はリスクに影響する可能性がある。 18

  19. Pharmacovigilanceと薬剤疫学 • 疫学的手法は、対象集団における有効性と安全性の評価における主要な方法である。 • 薬剤疫学研究、特に観察(非介入)研究は、医薬品安全性監視の構成要素である。 • 観察研究デザインの主なものに、断面研究、症例対照研究及びコホート研究(後向き及び前向き研究)がある。 19

  20. Pharmacovigilanceと薬剤疫学(2) • 薬剤疫学研究よって得られた情報の評価は、医薬品の安全な使用を保証する医薬品安全性監視活動における必須の要素である。 • 医薬品使用者へ適切にフィードバックを可能にする医薬品安全性監視によって、患者のリスクを低減しベネフィットとリスクのバランスを改善することができる。 20

  21. 安全性研究と有効性研究 • 「有害事象」の発生を調査して、使用者集団での発生率を評価する:安全性研究 • 長期使用による原疾患の合併症発生率の低下などの有効性を評価する(長期予後に対する医薬品の効果の問題):有効性研究 • いずれも、集団を対象とした薬剤疫学研究 21

  22. 薬剤疫学研究の対象集団 • 一般に「有害事象」の発生率はごく低い • 多数の人の集団が必要 • 無作為割付をしていない比較群を用いる • 比較に用いる集団間で、性・年齢・合併症の相違が存在する   薬剤疫学研究では • バイアスを極力少なくするように対象集団を選択し、情報を取得する。 • 集団間の相違を考慮して解析する。 22

  23. 薬剤疫学の二つの要素 • 適切なデザイン • 適切な統計解析 これまでの結果を正確に読む(論文を批判的に読む)ためにも必要 23

  24. 3.研究デザイン概要 24

  25. 疫学研究の分類 • 記述疫学と分析疫学 • 記述疫学:曝露の分布、またはアウトカムの分布を記述する。 • 分析疫学:特定のリスク要因(曝露、薬剤)の有無[注]と特定のアウトカム(有害事象)の有無との関連性に関する仮説の検討 注:異なる医薬品や異なる使用量とアウトカムの有無との関係を検討することもある。 • 観察研究と介入研究(実験研究) • 観察研究:研究者は介入せず観察する • 介入研究:研究者により、治療法が決められるなどある種の実験的介入 25

  26. 3.1 記述疫学 • 曝露の分布、有害事象などアウトカムの分布(発生頻度、有病率)の記述 • 性別、年齢などの人口動態学的変数で定義された小集団に層別化して示すこともある • 有害事象ケースの集積 • 有害事象のリスク要因を発見する第一歩 26

  27. 3.2 分析疫学 • 仮説の検証のため • 「特定の薬剤が特定の有害事象をひきおこす(発生をふやす」などの仮説を検証する • 「ある薬剤による原疾患の合併症を予防効果をもつ」などの仮説を検証する • リスク要因とアウトカム発生の関連性の強さを(リスク比、リスク差などの指標を使って)評価する 27

  28. 3.3 分析疫学の方法論コホート研究と症例対照研究3.3 分析疫学の方法論コホート研究と症例対照研究 28

  29. コホート研究 • リスク要因に曝露している群と曝露していない群に分ける。 • 両群をある期間にわたって追跡する • アウトカムが発生するかどうかを観察する。 • 曝露群と非曝露群で発生頻度や累積発生率を比較する。 相対リスク、寄与リスクを求めることができる。 薬剤疫学では、曝露の時間依存性(観察期間中におこる曝露の状態の変化)を考慮すべきことが多い 29

  30. コホート研究 • 定義した対象集団から抽出した標本(コホート)を追跡、観察して健康事象の発生を記述する、疫学的手法 追跡 曝露群 イベント発生率 比較 非曝露群 イベント発生率 現在未来 過去 現在 30

  31. 前向きコホート、後ろ向きコホート • 前向きコホート:現在から追跡を開始する • 後ろ向きコホート:過去に追跡開始時点があり、現在に向かって追跡する。 • 過去に曝露に関する正確な記録があるときに可能 31

  32. 閉じたコホート、開いたコホート • 閉じたコホート:曝露が固定されたのち対象者の出入りがない。 • 開いたコホート:標本は調査開始時には固定されず、調査期間途中で対象者が出入りする。 32

  33. ケースコントロール研究 • アウトカムを発生した群(ケース群)を特定し、発生しなかった群(コントロール群)を選択する • 問題となる曝露歴とその他のリスク要因を調査する • 両群の曝露率をその他のリスク要因の分布も考慮した上で比較する 発生率や累積発生率は求められない。 発生率が低い場合は、オッズ比が相対リスクの近似値となる コホート研究よりもバイアスが生じやすい。

  34. ケース・コントロール研究デザイン 曝露あり 曝露なし 過去の曝露 の有無を調査 ケース群 アウトカムの発生あり 曝露あり 曝露なし コントロール群 アウトカムの発生なし オッズ比の計算 過去 現在 34

  35. ソース集団の設定 • 研究の仮説や目的に適したソース集団(ケースを生み出した集団)を設定し、ソース集団からコントロールを選択する。 • ソース集団を明確に定義できない場合も少なくないが、不明確の場合(コントロールが適切に選択されているかを評価できないため)、バイアスが混入する可能性は否定できない • ケース・コントロール研究はコホート研究の枠組みで行うことも可能。(コホート内ケース・コントロール研究) 35

  36. ハイブリッドデザイン • ネステッド・ケース・コントロール研究(nested case-control study)(コホート内ケース・コントロール研究) • リスクセットサンプリング:コホート内でケースが発生した時点でケース外の全コホートから、性別や年齢などをマッチングさせて1~数名のコントロール群を無作為に抽出して選択する。 • ランダムデートによるサンプリング:コホートの全メンバーに対し、”random date”を割当て、観察期間内の”random date”からコントロールを選択。 • ケース・コホート研究(case-cohort study) • 観察開始時の全コホートからランダムにサブコホートを選択 36

  37. その他の疫学的手法 断面研究と傾向分析 • 断面研究:定義された対象集団のある時間的断面における研究。コホート研究同様、記述的研究(曝露、またはアウトカムの分布を記述)と分析的研究(曝露とアウトカムの関係を検討)に分ける。 • アウトカムと曝露との時間的前後関係を確かめられない。 • 有病割合は「発生割合」と「罹病期間」の両者に影響し、因果関係を検討することは困難であることが多い • 傾向分析:一般疫学では「生態学的研究」(ecological study)と呼ばれる。地理的に異なる同時期の複数の集団または同一集団の異なる時点での曝露とアウトカムの相関を調査 • 個人レベルの研究(コホート研究、ケース・コントロール研究)と一致しない結果が得られることもある 37

  38. 3.4 群間比較(実験研究) • 研究者の介入による群間比較 • ランダム化を行うと研究の質が上がる。 • ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)はバイアスや誤差が入りにくいデザイン • 問題点 • 労力と費用がかかる • 倫理的問題(有害事象や有効性が低いことを引き起こす要因を人為的に割付けることが許されないと判断される時もある) 38

  39. ランダム化群間比較試験の構造 被検薬群 介入 前 後 臨床試験の対象集団 標本集団 比較可能性 ランダム 割り付け 選択基準 除外基準 前 後 一般化可能性 対照薬群 二重盲検法 統計解析 目的とする集団 39

  40. 群間比較試験で重要な要素 • ランダム化:比較対象とする群間の比較可能性の確保 • 二重盲検化:情報バイアス混入の防止 • 統計解析:偶然誤差の評価 40

  41. エンドポイント(1) • 一次エンドポイント(主要評価項目) • 試験の目的そのもの • 妥当性の高い結果として認識される • 二次エンドポイント(副次評価項目) • 一次エンドポイント以外に探索的に検討する項目 • 妥当性は相対的に低いとみなされ、示唆にとどまる 41

  42. エンドポイント(2) • 真のエンドポイント • 主要評価項目のイベントの発生(たとえば、心筋梗塞、脳卒中など) • 代用エンドポイント(サロゲート・エンドポイント) • 主要評価項目のイベントの発生がまれで結果を得るのに時間がかかる場合に用いられる(不整脈を心筋梗塞の代用エンドポイントに用いる) • 代用エンドポイントは真のエンドポイントとの関連性が強いことが明らかであることが望ましい 42

  43. ITT解析とPP解析 • ITT解析(intent-to-treat、intention-to-treat) • 割り付けられた被験者すべてを試験終了まで割付通りに曝露を受けたと仮定して解析する • 脱落例などでバイアスが入るのを避ける • 「治療を意図した割り付けに基づく解析」 • PP解析(per protocol, protocol compatible) • 計画通り、試験が終了するまで割付けられた曝露を受けた被験者のみを解析対象とする • 仮説生成や仮説強化などの途中段階で行う。 43

  44. 4.統計学的側面 44

  45. 4.1 頻度の測定 • リウマチ薬副作用で134人死亡(Asahi.com:2005/02/12) • これだけでは重大な副作用かどうかを判断できない。 【他に必要な情報】 • この薬は何人くらいに使われたのか • この薬はどのような患者に使われているのか 重篤な疾患、高齢者など • 死亡報告の仕方 • 他の類薬での死亡は 45

  46. 状態の頻度についての指標 • 時点有病率(point prevalence) ある時点での有害事象を持っている人の割合 • 期間有病率(period prevalence) ある期間の開始時に有害事象を持っていた人と特定期間内に新たに有害事象が発生した人の合計の割合 46

  47. 発生の頻度についての指標 • 累積発生率(cumulative incidence rate) 定義された集団において有害事象を発症した人の割合 • 発生率(incidence rate) 定義された集団での有害事象を発生した新ケース数をその集団の全ての人がケースになる可能性のある時間(time at risk)の合計で割った値 発生ケース数 = 発生率 人・時 間の合 計 発生ケース数 » Time at risk の合計 47

  48. 4.2 頻度の比較 • 曝露群に対して適切な比較対照群を設定して比較することで、有病率や発生率が多いのか、少ないかを評価できる。 • 比較対照となる集団を「非曝露群」とする。 注:異なる曝露(異なる医薬品)間、異なる使用量間で比較することもある。 48

  49. 相対リスク(relative risk: RR) 曝露群と非曝露群の発生頻度の「比」 • 累積発生率比(cumulative incidence rate ratio) • 単にリスク比(risk ratio)ともいう • 「相対リスク」が発生率の比(率比) (incidence rate ratioまたは単にrate ratio) を意味することもある 49

  50. オッズ比(odds ratio: OR) • 累積発生率比の近似値として用いられる • 有害事象の頻度がまれな場合はオッズ比は累積発生率比のよい近似値となる。 50

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