イギリスにおける地域人材育成と認証システム

1. イギリスにおける地域人材育成と認証システムイギリスにおける地域人材育成と認証システム 小山善彦 バーミンガム大学社会政策学部 都市地域研究所 客員講師

2. スペンサー教授レクチャーから • 国の政策フレームワークの変化 　（権限委譲、ガバナンス、民営化、コントラクト、EU、ＰＰＰ、多数の短期事業、　　ターゲット、パフォーマンス測定、more for less） • 地方自治体の変化 　　（機能変化、政治構造改革、リーダーシップ、広域行政、地方税制、 　　　ユーザー主義、コミュニティ参加、脱官僚主義、ローカリズム、ＬＳＰ） • ボランタリー・コミュニティセクターの変化 　　（存在意義、独立性、デリバリー能力、スキルギャップ、コンパクト）　　 • 新しい人材・スキルの必要性 　（パフォーマンス、コントラクト、マーケティング、マネージメント、ネットワーキ　 　　　ング、パートナーシップ、組織キャパシティ、‘Ｃａｎ－ｄｏ’、イノベーションと 　　　リスク、コミュニティ参加、など）

3. イギリスでの地域人材とその育成 • パブリックセクター • ボランタリーセクター • コミュニティセクター • パートナーシップセクター • ガバナンスセクター • アカデミックセクター

4. 多様な認証システム • 大学での認証 • 全国レベルでの職能資格と認証 • ローカルレベルでの認証 • 専門団体による認証 • 組織としての品質認証

5. レベル 一般資格 職能関連資格 職能資格 ８ 博士（Dレベル） NVQ８ ７ 修士（Mレベル） NVQ７ 6 Honors（Hレベル） NVQ６ 5 Intermediate（Iレベル） NVQ５ 4 Certificate（Cレベル） NVQ４ ３ Aレベル 上級（Advanced） NVQ３ ２ GCSE（成績上位） 中級（Intermediate） NVQ２ １ GCSE（成績下位） 初級（Foundation） NVQ１ 基礎 教育・職能関連の基礎的成果 全国資格フレームワーク（２００４年から）

6. 認証に関係する国の機関 • QAA （Quality Assurance Agency for Higher Education） 高等教育機関（大学、大学カレッジ、高等教育カレッジ） • QCA (Qualifications and Curriculum Authority) 初等・中等教育機関 　　 成人教育（継続教育カレッジ）

7. 大学での認証と品質確保

8. カテゴリー レベル 資格の名称 単位数 Certificate １／Cレベル ・（University Certificate） ・Certificate of Higher Education 60 120 Intermediate ２／Iレベル ・（University Diploma） ・Foundation Degree ・Ordinary Bachelors Degree ・Diploma of Higher Education ・その他のHigher Diploma 120+60 120＋120 〃 〃 〃 Honours ３／Hレベル ・Bachelors degrees with Honors ・Graduate Certificate ・Graduate Diplomas 120＋120+120 Masters ４／Mレベル ・Postgraduate Certificate ・Postgraduate Diploma ・Masters Degree 60 60+60 60＋60＋60 Doctoral ５／Dレベル ・Doctorate 大学における学位および資格

9. バーミンガム大学生涯学習学科（学部コース）バーミンガム大学生涯学習学科（学部コース） タイトル　　　　：Certificate in Management and Communication 資格　　　　　　：University Certificate 単位数　　　　 ：60 期間　　　　　　：1年間パートタイム モジュール　　： マネージャーの役割 　　　　　　　　　　リーダーシップとチームワーク 　　 スタッフ開発のためのコーチング 　　 プロジェクトマネージメント 　　 サービスデリバリーの継続的改善 　　 ビジネスプラン／活動評価、など

10. バーミンガム大学都市地域研究所(学部コース）バーミンガム大学都市地域研究所(学部コース） タイトル　　　　：Regenerating Urban Communities 資格　　　　　　：－ 単位数　　　　 ：２０ 期間　　　　　　：1年間（毎週２時間） モジュール　　：コミュニティ主導の地域再生 　　　　　　　　　 都市再生論 　　　　　　　　　 都市の刷新と住宅問題 コミュニティでの経済開発 地域再生と環境問題 地域再生と健康問題、など

11. 大学院での学位と資格 • Postgraduate Certificate　　　　　 （資格） • Postgraduate Diploma　　　　　　　 （資格） • Taught Masters（授業修士）　　　 （学位） • Research Masters（研究修士）　 　（学位） • PhD　（博士）　　　　　　　　　　　　 （学位）

12. 大学への入学資格（成人） • ＡＰＬ Accreditation of Prior Learning • ＡＰＥＬAccreditation of Prior Experiential Learning

13. 大学におけるＣＰＤ • 政府政策：大学教育への社会参加拡大 • 政府政策：生涯学習促進（とくに、ＣＰＤ） • 期待しにくい学部コースからの収入 • 拡大するＣＰＤ市場への参入 • 大学イメージの改善 • 多様な学生の受け入れ（ＡＰＬ／ＡＰＥＬ）

14. コースタイトル 授与される資格・学位 PGC PGD MSc MBA Public Service MBA ○ 〃(Housing Association) ○ 〃 (Civil Service) ○ 〃(Volunt 〃 (Voluntary Sector) ○ 〃(International) ○ ○ Public Service Management ○ ○ ○ Local Governance ○ ○ ○ Social Services Management ○ ○ ○ Criminal Justice Management ○ ○ ○ Community Health & Social Services Management ○ ○ ○ Public Service Change and Organisational Consulting ○ ○ ○ INLOGOVでの大学院コース（授業型）

15. 研修テーマ 対象 期間 資格授与 公共サービス改革 政府機関職員 地方自治体職員 ５日間の滞在型モジュールが６回 ＰＧＣ、 ＰＧＤ、 MSc ローカル･ガバナンス・ マネージメント 地方自治体幹部職員 ４日間の滞在型モジュールが４回 ＰＧＣ ガバナンス・マネージ メント 地方自治体議員 ３モジュール（+３モジュール） ＰＧＣ、 ＰＧＤ、 MSc ＰＧＣ 公共セクター幹部養成 政府機関職員 地方自治体幹部職員 ５日間 公共リーダー養成 政府機関職員 地方自治体職員 NPO職員 ４日間の滞在型が３回 ＰＧＣ リーダー養成 地方自治体幹部職員 ３回の滞在型（３日間、２日間、２日間） ＰＧC ＩＮＬＯＧＯＶでのCPD研修プログラム

16. モジュール 大学院 Certificate 大学院 Diploma 大学院 修士 １ ３モジュール 　　履修 　　　　＋ プロジェクト 論文（3,000字） ６モジュール 　　履修 + プロジェクト 　　論文 （6,000字） ６モジュール 　　履修 　　＋ 　修士論文 （10,000字） ２ 　 ３ ４ ５ ６ INLOGOV研修コースの資格条件

17. 大学での認証と品質確保 • 学位授与権限（ＤＡＰ） • 学内での承認プロセス (学科→学部→大学） • QAAによる監査（レビュー） • 専門団体による認証およびレビュー • 行動規範およびベンチマーク（ＱＡＡ） • 市場（学生）による評価

18. ＱＡＡによる大学の組織監査 • Ｐｅｅｒ Ｒｅｖｉｅｗ（大学関係者５～６人） • 大学個性の尊重（システム評価） • 予備監査（３日間） • 本監査（５日間） • 改善提案（Desirable / Advisable / Essential） • 結果の公開 • 約１年間かける

19. 大学の品質確保に関する行動規範 １　大学院研究プログラム ２　外部団体との協力プログラム ３　障害をもつ学生について ４　外部者評価 ５　学生からの苦情対応 ６　学生の成績評価 ７　プログラムの承認とレビュー ８　キャリアについての教育とガイダンス ９　外部団体をつかった学生教育 10学生の募集と入学

20. 全国レベルでの職能資格と認証

21. 全国レベルでの職能資格と認証 • 全国職能関連資格（GVQ：授業型) • 全国職能資格（NVQ：実践能力) 　↑ 　全国職能基準（NOS）

22. 職能資格の開発・認証に関係する団体 国の監督団体 　　（ＱＣＡ） 専門団体 基準設定 　　団体 授与団体 アセスメントセンター／ プロバイダー

23. ＱＣＡによる品質確保 • 授与団体（Awarding Body）の登録と監督 • 授与団体からの資格申請時のチェック 　（最初の申請時／５年毎の更新時）

24. 　全国職能基準機能マップ －ボランティアの採用とマネージメント－ C ボランティアの採用と指導　 E 自己管理、ボランティアとの関係、　および自己責任のマネージメント A ボランティア 活動を支援す るための戦略 と政策の開発 および評価 B ボランティア活動の振興 D ボランティアの監督と教育 F　　ボランティア活動への支援

25. 全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　ジメント（６領域）全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　ジメント（６領域） • 領域A： ボランティア活動を支援するための戦略 　　　　　 と政策の開発および評価 • 領域 B： ボランティア活動の振興 • 領域 C： ボランティアの採用と指導 • 領域 D： ボランティアの監督と教育 • 領域 E： 自己管理、ボランティアとの関係およ 　　　　　 び自己責任のマネージメント • 領域 F： ボランティア活動への支援の提供

26. 全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　　　ジメント（領域Aのユニット）全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　　　ジメント（領域Aのユニット） • ユニットA１：組織としての戦略開発への貢献 • ユニットA２：組織としてのボランティア活動政策の 　　　　　　　　　開発 • ユニットA３：ボランティア活動を支援するための 　　　　　　　　　組織構造やシステムの構築 • ユニットA４：組織としての目標達成のためのプランの　　　　　　　　　開発 • ユニットA５：組織としての目標達成へのボランティア 　　　　　　　　　が果たした貢献評価

27. 全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　ジメント（ユニットA１）全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　ジメント（ユニットA１） • A1.1：組織に関係する受益者、ボランティア、 　　　　　その他のステークホールダーの確定と、 　　　　　それぞれのニーズ判定への貢献 • Ａ1.2：組織としての戦略的方向性の確定への 　　　　　貢献 • Ａ1.3：組織としての目的開発への貢献

28. 全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　　　ジメント（ユニットA１．３）全国職能基準：ボランティアの採用とマネー　　　　　　　　　ジメント（ユニットA１．３） • 組織の戦略を明確に理解している • 組織の目的と論拠を批判的に評価できる • 評価結果をスタッフやステークホールダーと協議できる • 受益者やボランティア、他のステークホールダーや 　 スタッフによるフィードバックを支援できる • 意志決定担当者に影響を与えられる形で、組織としての目的の改善点を提案できる • 自分で収集した証拠をもとに、その提案内容の論拠を 提示できる

29. 必須 ユニット 選択ユニットA 選択ユニットB B2 E2 E4 A4　　B1 B3　　C1 C3　　C5 D3　　D6 D7　　D8 E6　　F2 A1　　D4 D5　　F1 F4　　F5 F6　　F7 F8　　F9 F10　　F11 全国職能資格：ボランティアの採用とマネージメント 　　　　　　　　　　－NVQレベル４（現行システム） 資格条件：　必須 + 選択から５ユニット（うち少なくとも３ユニット 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　は「選択A」から）

30. ローカルレベルでの認証

31. ローカルレベルでの認証 • QCAよる授与団体が認証 • 一部の授与団体のみ 　（Open College Network） • 授与団体の自由裁量で • ローカル市場への対応 • 大学によるローカル認証（アカデミック）

32. Open College Network • 全国にある112の授与団体の１つ • 非営利団体 • 全国に28のOCNネットワーク • メンバー団体3900、学生数70万人 • ９割がローカル認証

33. Open College Networkの認証プロセス 　　　「認証」 パネル選択 「承認」 認証条件提示 OCNへ連絡 担当オフィサー 配置 プラグラム企画 OCN提出 履修証書の 　　発行 プログラム登録 ユーザー登録 外部者評価 （Moderation） レビュー

34. １ ボランタリーセクターの概観 8 資金の獲得戦略 ２ 組織レビュー 9 助成申請書の書き方 ３ ボランタリー団体と関連法 10 ICT戦略 ４ 財政的マネージメント 11 モニタリング、評価、クオリティシステム ５a 戦略的マネージメントツール(1) 12 コミュニケーション ５b 戦略的マネージメントツール(2) 13 実践的アドバイス ６ ビジネスプラニング 14 実践的アドバイス ７ 活動実践のための資金獲得 ＮＰＯ研修プログラムの一例（OCN認証） タイトル　： Developing Sustainable Organisations 実施団体：Birmingham Voluntary Service Council レベル　 ： ２／３　　　　単位　 ： １

35. 専門団体による認証

36. 専門団体による認証 • チャリティ団体 • 社会的ニーズへの対応 • 先行的にルールや資格の開発 • プロフェッショナリズムへの情熱 • 大学との協力／大学コースの認証 • 独自の認証コースと資格（大手団体） • CPD機会の提供

37. 王立都市計画協会（Royal Town Planning Institute） • 1912年の設立 • 新しいプロフェッショナリズムの開発 • 建築、土木、法律などの分野からの有志 • 大学での専門コースの導入 • 独自の試験制度→資格（CTP)の提供 • 最近の大学コースの不振→教育改革 • ２００４年９月から、大学コースの改革

38. 組織としての品質認証

39. 組織としての品質認証 • PQASSO • Investors in People • Business Excellence Model • IS9002／BS5750 • Social Audit

40. ＰＱＡＳＳＯの12の品質分野 1　　品質のためのプラニング 　　　　　　　 2　　ガバナンス　　　　　　　　　　 　　 3　　マネージメント 　 4　　ユーザー中心のサービス 　　 5　　スタッフおよびボランティア 　　　　　　 6　　トレーニングおよび人材育成 7　　資金管理 8　　資源管理 9　　活動管理　　 10　ネットワーキングとパートナーシップ 11　モニタリングと評価 12　成果

41. カテゴリー 評価指標 コミットメント 人材の成長支援にコミット 他者のパフォーマンス向上への支援を組織として推奨 個人としての組織への貢献が認識されていると信じる すべての人材への成長機会の提供にコミット プラニング 組織としての目標、目的、計画を内部者すべてが理解 人材育成活動が組織としての目標と目的に合致している 組織の目標と目的の達成にどう貢献できるかを理解 　　実践 マネージャーが各人の成長を効果的に支援 各人が効果的に学習し、成長 　　評価 個人の成長が組織やチームの向上につながる そのことを組織としての理解 組織としての人を成長させる能力が徐々に向上 Investors in People の評価指標

42. イギリスの人材育成と認証システム（１） • 多様な認証システムの有機的な成長 • 非営利セクターのリーダーシップ • プロセスとしての人材育成 • 個人の責任としての能力開発 • ＣＰＤによる人材育成

43. イギリスの人材育成と認証システム（２） • セクターを越えた人材の流れ • 大学資格と職能資格の相互関連性 • 「組織」の育成と認証システム • 人材育成市場（ＣＰＤ）の成長 • 「学習社会」に適した認証システムの開発 (共通単位制導入への動き)

44. Development and accreditation of academic training courses at universities Professor Ken Spencer Institute of Local Government Studies School of Public Policy The University of Birmingham UK

45. 1.Programme Approval Review Process – how new programmes are developed • New programme idea/concept from individual/department (including possible response to external requests) • Schedule for new programme to be completed and discussed at departmental level, then to be approved/revised/rejected at School Academic Committee • If approved proposal goes to University Academic Committee for its consideration. If approved (after any revisions) it goes to Senate (academic governing body) for approval (usually a formality) • Detailed schedule includes issues about marketing, pricing, evidence of demand, how it relates to other programmes etc. • If modules are changed on programmes there is a separate schedule for this and it goes via the same route

46. 2. Programme Approval Review Panels - who does the work? • Individual or groups of academics prepare the new programme in discussions with interested groups • The programme is considered within the department, by the undergraduate or postgraduate teaching and learning group • The proposal goes to the School Academic Board with representatives of key teaching and learning academics for its consideration • It has a Chair appointed by the Board in consultation with the Head of School • It has on it the School’s Director of Learning and Teaching – an eminent teaching skills academic (usually also qualified in such skills) • The University Academic Board is chaired by a senior academic, a Pro-Vice Chancellor and is the key decision body • Some programmes also go to the Externally Provided Programmes Committee • Senate is the elected academic decision body for the University

47. 3. Why do Schools in the University get involved in a range of Continuing Professional Development (CPD) activity? • To generate income to support other activities • To share research findings with practitioners • To learn from practitioners • To improve research standing and funding from the groups of specialised practitioners • To generate sponsorship from governments and international agencies • To test out speculative short non-accredited courses of varying lengths and premium costs • To demonstrate the University can relate to practitioners • It creates a new market for the School/University • Can lead to new Masters programmes lasting several years for sponsoring organisations • Improves image of the University

48. 4. The market place for CPD • Large market for CPD – but it can be very competitive • Aim for specialist premium priced programmes • Public service agencies and companies have budgets for training, they often want: - not to do the training themselves - specifically designed tailored courses - often these budgets are underspent • Has to be built on University and Schools’ existing reputation and strengths • More junior people would be more willing to do a Masters course

49. 5. Some good characteristics of CPD • University qualifications also being accredited by national professional bodies or programme accrediting agencies, e.g. Royal Society of Chemists, Association of MBAs • Working with specific organisations, e.g. local government, health service, to enhance professional workforce skills and knowledge • Employers paying the whole of the programme costs or contributing towards costs • Professionals using attendance on non-accredited short courses to demonstrate their own personal CPD learning to meet professional requirements for re-registration

50. 6. Some issues for academic staff in providing CPD • It requires new skills including confidence, flexibility and new ways of learning • Distance learning packages can be costly • Staff often too busy doing other work • Incentives for staff to undertake CPD work • University/School support systems to assist process • University/School facilities of high standard to assist process • Dedicated support staff who understand CPD work